2018年が始まりました。アメリカは相変わらず、トランプ大統領のあれやこれやで落ち着きませんが、変化への動きもあります。女性達の行動、ムーブメントです。トランプ大統領が就任1年を迎えた1月20日、全米の主要都市で女性らが集い、女性蔑視や人種差別的な発言を繰り返すトランプ大統領に抗議するデモ、ウィメンズ・マーチ(Women’s March=女性の行進)が今年も行われました。
昨年1月の大統領就任式翌日、首都ワシントンD.C.をピンク色で埋め尽くしたウィメンズ・マーチ。アメリカ国内外で「反トランプ」と人権重視を求める声が広がり、ワシントンD.C.で米史上最大級の約50万人、そして世界中で470万人以上が集まるデモとなりました。
※参考記事:ワシントンD.C.がピンクの海に染まった。トランプ大統領就任に反対するために(HUFFPOST)
今年のメーンは21日のラスベガスでの開催となりましたが、ワシントンD.C.をはじめ全米各地でもマーチが行われました。
政府閉鎖の日、女性達は集った
2018年1月20日はトランプ政権1年の象徴的な日になりました。トランプ大統領は、オバマ前政権時の移民制度の撤廃を打ち出しており、連邦議会では、それを支持する与党・共和党と、制度の継続を訴える野党・民主党が激しく対立してきました。この移民制度は、子どもの頃に親に連れられて米国へ不法入国した若者の強制送還を免除する措置「DACA(ダカ)」というもの。DACA制度に登録した若者は「ドリーマー」と呼ばれ、就労や通学が認められます。DACAを巡り、民主党がつなぎ予算に応じず、19日で予算が失効したため、米政府機関の一部閉鎖が20日から始まったのです。
※参考記事:トランプ米政権、若い移民救済制度を撤廃へ オバマ氏が批判(BBC NEWS JAPAN)
地下鉄で会場のリンカーン記念堂前にあるリフレクティング・プールへ向かいました。マーチを象徴するピンク色のニット帽をかぶった女性や、プラカードを持ったグループが次々に乗り込んできます。去年のマーチがどれだけすごかったか、地下鉄もあり得ないほど混んでいて大変だったかなどを楽しそうに話す人々の姿。知らない人同士でも盛り上がっています。
※参考記事:ピンクの「猫耳ニット帽」、トランプ氏抗議デモの象徴に(AFP BB NEWS)
リンカーン記念堂前で、最初に声を掛けた女性は、ティーシャコーンさん(44)。タイ出身で、米空軍の男性と結婚し、沖縄にも住んだこともあるとのこと。あまりの偶然にビックリしました。
参加の理由を聞くと、「今、この国で起こっていることにすごく怒り、憤慨しているの。トランプ大統領はリーダーではない。アメリカを間違った方向に進めようとしている。アメリカは移民の国。それなのに、彼は移民を止めようとしているし、私はそれが正しいとは思いません」ときっぱり。
昨年のマーチに参加して以来、地元選出の議員に手紙を書いたり、電話を掛けたりして、トランプ政権の政策を支持していないことを伝える行動を続けているそうです。そして、「今年はしっかり投票で示したい」と話しました。
「投票に力を!」中間選挙に向けた動き
今年のマーチで大きく掲げられたスローガンは、「投票に力を=Power to the Polls」。アメリカでは2018年11月、上下両院議員や州知事などを選ぶ中間選挙があり、その結果は大統領の信任を示す重要な節目となります。マーチの主催者団体は、昨年の抗議からさらに歩みを進め、中間選挙に向けて、多くの女性が行動を起こし、多くの女性の候補者を出し、草の根活動で候補者を支え、トランプ政権に「ノー」を突き付けようと、呼び掛けています。マーチへの参加者はリベラル、民主党支持者が多いということでもあります。
2017年のマーチを起点に、女性による数々の運動が起こり続けています。特に、性暴力を告発する#MeToo(私も)ムーブメントは大きく広がり、ハリウッドの女優らが性暴力被害者支援に取り組むキャンペーンTime's Up(タイムズ・アップ=時間切れ、もうおしまい)を始めました。
※参考記事:#MeToo とウーマンラッシュアワーから考える師走in 2017年 来年はあなたも「沈黙を破る人」に?(琉球新報Style)
2017年11月の地方選挙では、女性やマイノリティーの「初」州議会議員や市長が次々と誕生。全米が注目した12月のアラバマ州選出上院議員補欠選では、多くの未成年女性への性的問題疑惑が報じられた共和党候補を、民主党候補が破りました。保守盤石のアラバマを動かしたのは、黒人女性の民主党候補への投票だったともいわれています。
※参考記事:<金口木舌>2018年は「女性の年」(琉球新報)
※参考記事:「反トランプ」中間選挙に立つ女性たち セクハラ告発のうねり「新しい日」期す(西日本新聞)
マーチ会場は「女性」「私」「私達」を主語にしたさまざまなプラカードがあふれていました。「私の体は、私のもの」「女性のように闘おう」「私たちの声を聞け」「トランプが嫌いなものが私たちは好き」―。女性達は「怒り」を行動に変え、選挙という形でしっかり結果を示そうとしているのです。
座波幸代(ざは・ゆきよ) 政経部経済担当、社会部、教育に新聞を活用するNIE推進室、琉球新報Style編集部をへて、2017年4月からワシントン特派員。女性の視点から見る社会やダイバーシティーに興味があります。