インターネットを検索すると、「タレントAの本名は?彼氏はいるの?」「B事件で逮捕されたCの出身校は?家族は?」と書かれたタイトルの記事を見たことないですか?
こうした記事を書いているサイトを、トレンドブログと呼びます。
トレンドブログでは事件や事故、または話題になっている芸能人の情報をタイムリーにまとめ、アクセスを稼ぐサイトです。
お金目的のトレンドブログ
トレンドブログは、記事が検索した時、上位に出てくるように対策を取っています。これをSEO対策(検索エンジン最適化)と呼びます。
検索上位に来るために、ある程度長い文字(数千字)を書き、テレビで取り上げそうなタイムリーな言葉を文中に入れます。
例えば、事件の「被害者」の個人情報はテレビなどであまり報じられません。
こうした情報を、Facebookなどを参照にまとめ、テレビにはない情報をプラスしていきます。
または確証が得られずテレビが報じない「噂」などもガンガン載せていき、独自の情報として発信していきます。
こうしたトレンドブログ運営者は何が目的なのでしょうか。
これは本人にしか分かりませんが、おそらく「広告収入」でしょう。
インターネットではWebサイトに広告を貼り、その広告がクリックされることで収入を得ることができます。
実際「トレンドブログ 」と検索すると、「トレンドブログ で稼ぐ!」と紹介されているページが多数出てきます。
アクセスが稼げそうなテーマ(事件・スキャンダル・ゴシップなど)を選定し、検索上位にくるようネットから噂をかき集め、字数を増やして記事を書く。
これがトレンドブログ です。
トレンドブログ からデマが広がる例も
トレンドブログ が噂をまとめたがゆえ、広がったデマがあります。
昨年6月、交通マナーを注意されたことに腹を立てた男性が東名高速の道路で車の進路を妨害し、2人が亡くなる痛ましい事件が起こりました。容疑者の男性のインタビューでのふてぶてしい態度なども相まって、多くの人が怒りを覚えました。
容疑者が逮捕された昨年10月、トレンドブログ が「容疑者は父親が経営している会社で働いている」「父親の名前と勤務先が判明!」とまとめ、個人情報が拡散され、苦情の電話が殺到しました。
しかし、父親とされた男性・会社は容疑者と全く無関係でした。
記事:「デマ」と「私刑」 加害者にならないために冷静な対応を モバプリの知っ得![29]
さらに昨年7月には「俳優・西田敏行さんが違法薬物を使用している」「間も無く逮捕される」など、ネットの噂をまとめたトレンドブログ の管理人が書類送検されています。
記事:デマでお金儲け…そんなネット社会 モバプリの知っ得![14]
トレンドブログ でアクセスを稼ぐためには話題が旬のうちに、すぐに記事を書かなければいけません。また、アクセスを稼ぐためには人を惹きつける刺激的な内容が求められます。
こうした状況のため、正確性がおざなりになりデマや不確かな情報が紛れやすい。
これがトレンドブログ の構造です。
類似例の多い「テキスト動画」とまとめサイト
トレンドブログ と同じことをYouTubeの動画で行う「テキスト動画」も存在します。
YouTubeで文字とBGMがスクロールしながら再生されます。
ここでも最新のニュースや芸能人の「噂」などを、確かな情報のように流しています。
また広告収入目的でデマを拡散する、迷惑なサイトの中には「まとめサイト」もあります。
まとめサイトは、インターネット掲示板5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)やTwitterなどの書き込みをまとめて記事にするサイトです。
トレンドブログなどと同じく、噂や不確かな情報をさも「事実」かのように拡散させるので非常にタチが悪いです。
記事:「まとめサイト」に気をつけて モバプリの知っ得![27]
トレンドブログが「インターネット検索上位」に来るように最適化されているのに対し、まとめサイトはSNSで拡散されるように、キャッチーで過激な見出しをつける傾向にあります。
改めて考えるトレンドブログの問題点
トレンドブログはデマが紛れ込みやすい反面、「分かりやすいからいいじゃん」と思う方もいるかもしれません。
しかしながら、事件の加害者・被害者の個人情報を「報道の範囲」を明らかに超えてまとめる行為は許されるのでしょうか。こうした情報をネットに残す行為は羞恥刑であり、そこから誘発される非難は私刑です。
前述した「容疑者の父親デマ」「西田敏行さんのデマ」など、実際に被害をうけている人、苦しんでいる人もいます。そして、書き込んで書類送検された人もいます。
こうしたトレンドブログのアクセス(広告収入)に貢献しないためにも、検索に引っかかっても、見ないことが大事です。
また、ネット上で「トレンドブログ で稼ぐ!」などの記事を見かけても、訴訟のリスク、さらにはGoogleが検索結果の順番を判断するルールを変更する可能性などもあるため、おすすめできる仕事ではありません。
トレンドブログなどは「見ない・信じない・拡散させない」の気持ちでのぞみましょう。
琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」3月18日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。
親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。
【プロフィル】
モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。