差別や偏見を生まない言動”ポリコレ”を身につけよう! モバプリの知っ得![59]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

ライトノベル『二度目の人生を異世界で』の原作者が、ツイッターに差別的な投稿をしたとして6月6日、本や単行本の出荷停止、アニメ化が中止になるなど大きな騒ぎになっています。

このライトノベルの原作者は、2012年ごろから、中国のことを「虫国」、韓国のことを「姦国」などと差別的な言葉を使って表現し、ツイッターに多数投稿していました(現在は削除済み)。

昔の投稿が原因で仕事を失う。

こうした風潮に息苦しさを感じる人がいるかもしれませんが、差別や蔑視も誰かを息苦しくする行為です。表現・言論の自由はあれど、誰かを傷つけ、安全を脅かす自由はありません。

こうした問題は「差別的な投稿をしないよう気をつけましょう」の一言では解決できません。なぜなら、差別的な投稿をする人たちは、それが差別だという自覚がないからです。

例えば、どれだけ注意をしても、自動車学校に通わず、道路交通法を学んでいない人が車を運転することは危険なことと同じです。基本ルールが分かっていないと、気をつけようがないのです。

言葉は自分の意思に反し、誰かを傷つけたり不快にさせることがあります。
ましてや意図せずに拡散される「ネット」の海に投げるのであれば、より一層気を使う必要があります。

誰かを傷つけないためにも、自分がキャリアを失わないためにも、慎重に取り扱う必要があります。

 

意識したい「ポリコレ」

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

同じような問題は、アメリカでも起きています。
先月、女性コメディアンのロザンヌ・バーがツイッターにて「(イスラム組織)ムスリム同胞団と猿の惑星の赤ちゃんがvj(オバマ前大統領の側近)だ」と人種差別的な投稿をしたことで、主演ドラマの打ち切りが決まりました。

余談ですが、投稿したバー本人は謝罪したものの、「あの日は睡眠薬を飲んでいた」と釈明。それを受けて睡眠薬の製薬会社が「薬の副作用に人種差別はありません」と、ぐうの音も出ない反論をしたことも話題となりました。

ライトノベル原作者も、女性コメディアンも、自分の発言がここまで大ごとになるとは考えていなかったでしょう。

こうした問題を起こさないためには、差別について学ぶ必要があります。

政治的・社会的に正しく、中立・公正で差別や偏見を含まない言動を「ポリティカル・コレクトネス(略称:ポリコレ)」と呼びます。

例えば数十年前まで、セクシャルマイノリティーは「病気」「犯罪」として扱う国が多数ありました。今でも厳格なイスラム国家では犯罪扱いされています。

近年、人権に関する意識が進み、ポリティカル・コレクトネスの概念が浸透することで、まだまだ不十分とはいえセクシャルマイノリティー への理解も広がってきました。

セクシャルマイノリティーの人たちを「LGBT」と表現することがありますが、「セクシャルマイノリティーの人を『くくる』表現が、異性愛者(ヘテロセクシャル)との間に壁をつくる要因にもなる」などの意見もあります。

そうした指摘を踏まえ、最近ではSOGIという言葉を使う動きが広がっています。SOGIとは「Sexual Orientation and Gender Identity」、日本語に直すと「性的指向と性自認」という意味です。

SOGIは概念を表す表現なので、全ての人が同じ「傘」の中に入るわけです。つまりLGBTよりもSOGIの方が誰かを傷つける可能性が低く、ユニバーサルでポリコレ的にはベターな言葉になるというわけです。
 

 

アップデートし続けること

このようにポリティカル・コレクトネスは時代ごとに変わりつつあるもので、それにあわせて自分の知識もアップデートしないといけません。

数十年前だったら許されたような言動も、ポリコレが浸透した今となっては「ハラスメント」「差別」と認定されることになります。そのため自分の過去の経験だけで判断するのではなく、新しい価値観を素直に取り込み、使う言葉を選ぶ必要があります。

こうした流れのため、欧米などではポリコレの基準が厳しくなり「息苦しいから開き直って差別してやる!」とした人たちも出てきています。ポリコレの反動です。

さらには、ポリコレを盾に、徹底的に人を叩く「ソーシャルジャスティスウォリアー(SNSの正義の戦士)」も問題になっています。

 

【参考記事】「ソーシャルジャスティスウォリアー」って何!?私刑を行うネットユーザーへの警鐘  モバプリの知っ得![15]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-540472.html

 

こうした傾向は日本でも現れつつあります。

今回のように差別的な発言を謝罪しキャリアを失う人がいる一方、開き直って差別的な発言を繰り返し、一部の人たちから熱狂的な支持を得るベストセラー作家もいます。

「差別的な発言はダメです」「ポリティカル・コレクトネスを意識しましょう」と言い続けないといけない一方、言い続けることで反動が生まれる。
差別主義者がいるからポリコレが生まれる、ポリコレがあるから反動で差別主義者が生まれる、正直「鶏が先か、卵が先か」のようなジレンマすらあります。

考えると「キリ」がない、ベストな答えはないと思える問題ですが、だからこそ、考えるのをやめたり開き直ると人を傷つけることになります。

アップデートされる価値観についていき、人を傷つけないようにするためにも、まずは丁寧にこうした問題を考えることが必要です。

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」6月17日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/