「ハロ~、ハイタ~イ(こんにちは)♪」
軽やかな笑顔でイベント会場に登場したのは、世界的に活躍するダンサーで女優の仲宗根梨乃さん。クールで神秘的な雰囲気をたたえながら、口を開けばバリバリのうちなーぐちと英語を織り交ぜた「梨乃流」全開の伸びやかな本音トーク! その飾らない人柄が、人々を魅了してやまない彼女の魅力なのだ。
ブリトニースピアーズやジャスティン・ビーバーなど名だたるアーティストのバックダンサーを務め、韓国の人気グループSHINeeや少女時代に振り付けを提供してきた仲宗根さん。女優へのチャレンジを始めたきっかけや今チャレンジしていること、そして故郷・沖縄への思いを語った。
◇レポート:佐藤ひろこ(琉球新報Style編集部)
映画「ココロ、オドル 満月荘がつなげる3つのストーリー」の公開記念トークイベントが1月18日、那覇市の琉球新報社で開かれました。テーマは「ワクワクしながら世界で働く」。同映画が美しい海と貴重なサンゴに囲まれた座間味村で撮影されたこともあり、沖縄を拠点に「サンゴに優しい日焼け止め」の製造・販売を手掛ける社会起業家の呉屋由希乃さんと仲宗根さんが対談。後半には出演者の尚玄さん、山城智二さんも交え、沖縄を舞台に「絆」を描いた、笑って泣ける同作品の魅力を語り合いました。トークの一部をレポートします。
※司会は琉球新報社の久田尚志が務めました。
★2月2日「ココロ、オドル」初日舞台あいさつ。
ゲストは岸本司監督、加藤雅也、尚玄、山城智二など。
詳しくは http://sakura-zaka.com/movie_info/17930
司会)仲宗根さん、呉屋さん。さっそくですが今、何に挑戦されていますか?
仲宗根)常に毎日、何かにチャレンジしていますよ。とにかくいい人になりたい(笑)! どれだけハッピーでいられるか。We are the world!! とにかく毎日毎日、感謝することにチャレンジしています。どんなことに対しても!
司会)ダンスだけじゃなく映画にも挑戦を始めたきっかけを教えてください。
仲宗根)同じことはしたくないんです。でもエンターテインメントは大好き。ダンサーとしてやりきったし、大好きだったマイケル・ジャクソンが亡くなったことも大きかった。振付やコンサートの演出などもさせていただきありがたかったんですが、「まだ自分が表現できることって何かな~」って考えたときに、アクティング(演技)がボーンときましたね。
司会)いつ「やりきったな」って思ったんですか。
仲宗根)ダンスを愛して突っ走ってきたんだけど、段々と苦しくなっちゃったんです。自分を見つめ直さなきゃいけない時期がきたんですね。もちろんダンスは好き。「踊りたいときに踊る」という原点は今でも変わらないし大切にしています。
司会)映画に挑戦しようと思ったきっかけは?
仲宗根)私はいつも恵まれているなぁと思います。何かやりたいなと思ったことを、周囲に話すんですよ。すると、そこからのつながりや紹介でオーディションの話をいただいたり…いい感じで道ができていた。いい流れでいい人と出会えた。もちろん私がダンサーだったからこそ頂いた話なので、そこもやっぱり感謝です。
「サンゴに優しい日焼け止め」を広めたい
司会)「サンゴに優しい日焼け止め」の製造・販売をされている呉屋さんの挑戦も聞かせてください。
呉屋)一般的な日焼け止めはサンゴに悪い影響があって、海外では禁止になっている国もあるんです。でも日本にはそういう商品がほとんどなかった。誰かがやってくれるだろうと思っていたんだけど、調べれば調べるほど(採算性などの問題から)どこもやらないなって思ったんです。「じゃあ、私がやるしかないのかな」と思って始めました。でも、あまり売れないんですよ。だから、もっと広められるようにチャレンジをしているところです。
仲宗根)すごい!! もう尊敬でございますよ!!
司会)タイでも「サンゴに優しい日焼け止め」の販売を始められています。なぜタイなんですか?
呉屋)沖縄で一生懸命に広めようとしても、なかなか声が届かないんです。うちなーんちゅ(沖縄の人)は海に行かないですからね。届けなきゃいけない人は遠くから来る観光客。どうやったら遠くから来る人々に届けられるかな~と考えたときに「黒船パワー」しかないなと。海外で発信することで「海外で流行っているみたいよ-」と興味を持ってもらえるんじゃないかと思ったんです。
タイは世界で3番目の観光立国。沖縄の海に来る人は、タイのプーケットやフィリピンのセブにも行く可能性がある。どこかで「サンゴって大事」って分かったら、既にサンゴの大事さを分かっている状態で沖縄に来てもらえるんじゃないかと思っています。(サンゴに有害な物質を含む日焼け止めの販売や持ち込みを禁ずる法整備などが)進んでいるのはパラオ。今はパラオにも力を入れています。
ロスと沖縄はつながっている
司会)仲宗根さんは沖縄の海が懐かしくなったりしないんですか。
仲宗根)ん~ロスにも海があるじゃないですか(笑)。ロスで海を見たら「沖縄や日本とつながっているな~」と思います。波が強くてさらわれそうになるけど、海に入った後はクレンズ(浄化)され、海のパワーに何か頂いていますね。
呉屋)海に入った後にクレンズされた感じがするって、本当にそう。慶良間諸島は特にパワーが全然違う。「ココロ、オドル」の撮影中には泳ぐ時間はありましたか?
仲宗根)…撮影は真冬だったんです(笑)。ただオリオンビールのCM撮影で、色んな離島に行かせてもらいました。透き通り感が違いますよね。
呉屋)皆さん、慶良間諸島はサンゴがものすごくキレイなんですが、実は色んな場所でサンゴが死んでいます。慶良間諸島は奇跡的に残っていると言えるほど。梨乃さんが一言、(サンゴを守ろうと)言えば、理解や行動が広がるんじゃないかな~。
仲宗根)私なんてまだまだ。皆さんが聞きたくなる有名人の発信が一番効果あると思う。私もマイケルがペプシのコマーシャル出ているからペプシ飲むぜ~ってなっていたし。シンプルなことだよね。人はきっかけで変わる。私たちが今日出会えたことで、ここから何かが始まっていると思う。自分にできることを少しずつ、おのおのがやっていくことが大切だと思います。
沖縄の魅力…当たり前がエネルギーだった
司会)沖縄の魅力をお二人に聞きたい。
仲宗根)わぉ~。しにばんないある~(とってもたくさんある)。
呉屋)私は沖縄市出身で、東京に5年、ニューヨークに3年住んでいました。遊ぶ場所としては沖縄市が一番楽しい! 沖縄は人との距離感がすごくいい。オープンに人と向き合える人の中にいるって、すごく幸せだなって思う。人との触れ合いが一番の魅力だと思う。
仲宗根)私は沖縄を出る前は「でーじ(すごく)出たい」としか思ってなかった。沖縄を出て初めて素晴らしさを知った。まず沖縄に足を踏み入れた瞬間の「沖縄には勝てない感」(笑)! ウェルカム、あたたかい、海、太陽…当たり前のことが私のエネルギーやお守りだったことを、沖縄を離れて初めて理解できた。
仕事でシュノーケルをして海の中をのぞいて、たくさんの魚がいるのを見て「海は彼らの世界。私がお邪魔しているんだ」と思った。地球にはいろんなバランスがある中、人間が悪影響を及ぼしている。沖縄の海は美しいのが当たり前だと思っていたら怖い。「当たり前」が実はラッキーなことなんだと思う。
私には呉屋さんがやっていることはできない。私ができることは、彼女が作ってくれた日焼け止めを使うことや、そんな商品を作ってくれる彼女にありがとうと感謝すること。おのおのミッションがある。私は私のできることをする! …もはや質問が何だったのか…あぁ、沖縄の魅力だ! 沖縄の魅力は『ココロ、オドル』を観ていただいたら分かります! オバーの一言一言が、沖縄女性のメンタリティーを表していると思う。
地球人の仲宗根梨乃は「沖縄系女優」に!
司会)仲宗根さんは、こんなに沖縄が好きなのに何で外に出ているんですか?
仲宗根)ただアメリカに住みたいから! あはは~っ。居心地がいい。でも沖縄は沖縄で、帰ったらいつでもホーム。でも、ずっといなくていい。いいタイミングで神様に呼ばれるから。沖縄もロスも大好き。
呉屋)梨乃さんって地球人じゃないですか~。ロスに住んでいるとか沖縄にいるとか関係ない。活躍できる場所がロスにあるってだけなんですよね。私が勝手に期待しているのは「イタリア系女優」「ユダヤ系女優」とか色んなカテゴリーがある中で、梨乃さんは「沖縄系女優」というジャンルを切り拓くんじゃないかという妄想! ジャンルを1個つくっちゃお! できるできる!
仲宗根)わぉ~リアリ~? レッツゴー!
やりたいことを、やり続ける
司会)会場からどなたか質問ありますか?
女性)夢を口にしたときに、親など反対する人に対して、どういう風に説得しますか?
仲宗根)私は親の反対は無視して、やりたいことをやり続けていました。生まれたときから反抗期と言われていましたね(笑)。でもある意味、親は親としてもっともなことを言っていたと思う。アメリカに行くのも反対されて…でも私は行かないってあり得なかったから、計算じゃないけど、泣きましたね。そして最後には理解してくれた。反対されても進めばいい。後で理解してもらえますよ。自分が本当にやりたいことをやっていけば理解は後からついてくる。人の言うことを聞いていたら何もできないし、もったいないよね。自分は自分。自分が納得すればいいと思う。
呉屋)そもそも親の人生と私の人生は違う。そして私がやりたいことに対して、彼らは情報持っていないのでアドバイザーとしては不適合。私は感情的な意見には向き合いませんでした。
仲宗根)アドバイスはその道で成功している人に聞くしかない。知らない人に聞くと「やめときなさい」と言うしかないから。
尚玄さん、山城智二さんも登壇
司会)自分が「ココロ、オドル」道を突っ走るということですね。ここで仲宗根さんと共演された尚玄さんと山城智二さんにも登壇していただきます。
司会)呉屋さん、試写を観られての感想は?
呉屋)新しいタイプの沖縄の映画が出てきたなという印象。「沖縄あるある」だけど、腹落ちするところがあって、観終わった後に「わ~すごく、いい時間だったな」って感じました。映画を観ているんだけど、自分と向き合っているような…登場人物を通して、自分や周りの人と向き合っているみたいでした。キャスティングも素晴らしくて素晴らしい映画でした。智二さんの役、良かったですよね。
山城)ありがとうございます。皆さん、聞きました? 僕は島の警察官の役ですが…ほんと重要な役です。…って、すみません、今のうそです(笑)。笑いのスパイスになるような役をやらせてもらっています。世界的ダンサーの梨乃さんが「ココロ、オドル」って、一番ぴったりな役ですよね。どうでしたか?
仲宗根)オーマイガッ!私は沖縄県系3世のメグ役。でも私の英語はネイティブの発音ではないので、もっと訓練しておけばよかったなと…。でも監督から、発音よりメグっていうキャラクターに集中してと言われて、心がスッとなった。
尚玄)メグって役日本語が分からないけど、顔は沖縄人。梨乃さんは適役だなと思った。
仲宗根)わぉ。やっぱり尚玄は私のマネジャーかもしれない(笑)。
山城)前半の梨乃さんと呉屋さんのトークをずっと見ていたけど、エネルギーや人間性が圧倒的。梨乃さんがスクリーンにいるだけで説得力が違う。きっと徹底的にやる人なので演技ももっと学ばれるんでしょうが、梨乃さんはそこにいるだけで面白いから、それでいいのかなって思います。
仲宗根)You too!
山城)僕と梨乃さんでは、犬でいったら血統書付きと雑種ぐらい違うさ(笑)。でもそういう人がスクリーンに1人ぐらい必要じゃないですか。
呉屋)もし続編があって、梨乃さんと尚玄さんが出演しないときにも、智二さんは出ているっていう役ですよね~(笑)。
山城)そうです? じゃぁ皆さん、やっぱり僕は重要な役なんですよ(笑)!
恐怖に勝つのは愛!
尚玄)岸本監督が智二さんを大好きなんですよね。愛があふれているんですよ。
山城)ありがたいですよね。
尚玄)いや、ずるいんですよ。ご飯の量もいつも多かったし…。
山城)えぇぇぇっ? そんなこと? (会場大笑い)梨乃さんは最近、短編映画『きたなかスケッチ』にも出ていましたよね。これからはガンガン映画でいくんですか?
仲宗根)その時その時にやりたいことを、一歩一歩やっていきたい。アクティングはもちろんやるけど、だからといって急いではいない。今やるべきこともやるし、それが結果的に全てにつながっていくと思う。
山城)呉屋さんが「梨乃さんは地球人」と言っていたが、まさにそう。その人柄で、いろんなところにでてほしい。皆さん、スクリーンで聞きたいですよね。梨乃さんが「アゲッ」とか「はごーさーよー」とか言うの(笑)。アメリカにも東京にも長くいたのに、誰よりもウチナームニーだし(沖縄の言葉)。英語と日本語、うちなーぐちが混ざった「梨乃語」に引きつけられるし、勇気づけられる。
仲宗根)ザッツライト。ノールールだから!
山城)イベントなどで人前に立った時、「ちゃんと言わないといけない」って思うじゃないですか。でも違うんだよね。みんなが聞きたいのは本音だから。呉屋さんもそういうタイプだよね。
呉屋)私も人から「なまっている」って言われる。でもさ、「私は英語も1級だし、標準語も1級だよ」っていうと、信じる人がいるんですよ~(笑)。「標準語1級なんだ~」って(笑)。
仲宗根)私だって自信がないときもあるけど、自信なくてもやるんですよ。怖くてもやるんです。それが自分の経験や励みになることなので、やりたいと思ったら恐怖より愛が勝ちますね!
山城)恐怖に勝つのは愛なんだ! めっちゃぐっときた。愛を持ってすれば全て越えられる、みたいな?
仲宗根)I think so.
山城)愛っていうのは、自分に対しての愛? それとも全てに対しての?
仲宗根)それちょっと哲学入るね~。だって海を守る、サンゴを守るって、それは結果、何?
呉屋)それは結果、私を守ることになる!
仲宗根)オーイエイ!ザッツライト!
呉屋)愛はつながるね~。でも私の場合は「海を愛している」という感覚ではなく、当たり前のこと。恩恵を受けて育っているし、海がないと呼吸もできないし。そんな当たり前のことが伝わらなくて苦しいけど…愛を持って解決していければいいな。
尚玄)つながっているものがあるじゃないですか。岸本監督も映画で色んなことを描いている。今回は3話に分かれているけど、人間も自然も、それぞれがどっかでつながっている。
山城)尚玄も世界中を渡り歩いているんですよ。
仲宗根)どこの国の人と会っても、映画関係者はみんな尚玄のこと知っているんですよ。すごいネットワークと行動力。これは才能。だからやっぱり私のマネージャー(笑)。
山城)梨乃さんは岸本監督と2作品やってみて、どう?
仲宗根)やっぱり天才。尊敬している監督。「ココロ、オドル」も細かいところに全てメッセージが詰まってるから3回以上観てほしい。岸本監督はアイデアもオープンに聞いてくれるし、ぶれない。すごく勉強になる経験をさせてもらいました。
山城)梨乃さんのシーンで印象的なのは、海にバーンと……
え?言ったら(ネタバレだから)ダメ?
尚玄)あんまりそこは…。
仲宗根)あ~やっちゃったやっちゃった~(笑)!
山城)いいシーンがいっぱいあるんですよ!
仲宗根)毎回毎回、何か発見できると思います。
山城)自分と向き合える作品。登場人物が自分と重なっているな~とか。深く観れる映画だと思うので、ぜひご覧になっていただきたいです。