知らないうちに情報が偏る「サイバーカスケード」に気を付けよう! モバプリの知っ得![99]


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インターネット上で知らず知らずのうちに意見が偏ることを「サイバーカスケード」と呼びます。あまり聞き慣れない言葉ですが、「現象」としてはとても身近なものです。

ネット検索では自分が入力した単語について調べることができます。言い換えると、自分の興味あるジャンルや意見を覗きに行くことができる。
またSNSでは、フォローする人を自分で選ぶことができます。そのため、自分が興味のある人、趣味嗜好が近い人だけを選びがちになってしまう。

こうした行動の積み重ねが、意見を偏らせたり、間違った認識へ誘導し、場合によっては先鋭化し、過激になることもあります。

タイムラインは本人に似る

無自覚に意見が偏る、サイバーカスケード。
それらが発生する原因は、SNSで繋がりを持つ、頻繁にやり取りをする人が自分の属性と近いために発生します。

例えば、私モバイルプリンスはスマートフォンが大好きです。そのため、SNSで繋がっているフォロワーの人も、スマホ好きが多い。

新機種の発売日になると多くの人がその機種を購入し、SNSに購入報告をします。
そうなると私のSNSのタイムライン(SNSの表示画面)は、購入報告で溢れ「この機種は物凄く売れているんだろうな」と認識してしまいます。

しかしながら、街を歩いている人に聞いてみると、その機種を買っていないどころか、発売されている事すら知らなかったりします。

また、私のスマホ好きの友人たちは最新のスマホを複数台購入して持ち歩いているため、3台も4台も持ち歩いていることがSNSでは当たり前になっています。
しかし私がスマホを3台持ち歩いているのを、スマホ好きでない友人が見ると「スマホ持ちすぎだよ」と驚かれることもあります。
SNSでの常識が、リアルでは非常識(あるいは特殊)に映るということです。
こうしたサイバーカスケードは趣味の範囲を超え、ニュースや歴史、差別問題へと飛び火することがあります。

例えば、過去に県外の飲食店などで「琉球人お断り」として沖縄出身者が差別されていた過去がありました。先輩たちの頑張りで、今日ではこうした「直接的な沖縄差別」はあまり見られなくなりました。

そのため、若い人たちは「沖縄差別」と聞いても、「自分は差別された事ないし…」と差別の歴史に、あまりピンと来ないかもしれません。
SNSでは自分と近い属性の人と繋がりやすいため、若い人が同世代としか繋がっていないと、周りからも「差別されたことないよ」とした意見が集まり、「沖縄差別は無かった」といった結論になることが予想され、フォロワーや繋がりの属性に偏りがあるために、事実に基づいた正しい認識ができなくなる可能性だってありえます。

ここでは「沖縄差別」を持ち出して説明しましたが、この部分を「外国人」「セクシャルマイノリティー」に置き換えても同じことが言えます。

サイバーカスケード化したために、「自分の周りではセクシャルマイノリティーが無いから、別に何も気にする必要なんてないんだ」とした結論にたどり着くと非常に怖いです。

サイバーカスケードを考えると、「ペットは飼い主に似る」という話ではないですが、「SNSのタイムラインは本人に似る」と表現することもできます。無意識のうちにフォローすると、結果的にタイムラインには偏りが出てしまうため、自覚的にタイムラインを作り上げる必要があるでしょう。

身近なネット上の「バイアス」

インターネットの仕組みとして、こうしたバイアス(偏り)が発生するのは何もサイバーカスケードだけではありません。

例えば、自分の中で答えを決めて検索をする、「確証バイアス」なども注意が必要です。

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https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-515464.html

これは、賛否ある事案に対して「○○  賛成」と検索すると、賛成意見しか出て来ない。あるいは「○○人 犯罪」と検索すると、外国人の犯罪のニュースだけが検索に引っかかり、まるである人種の人たちが凶悪粗暴であるかのような偏見に染まる。これが確証バイアスです。

ネットでは自分で「選ぶ」自由があるからこそ、自分の好きなものだけで埋める事もできます。毎食バイキング料理を食べ、自分の好きな料理だけ選んでいると栄養バランスが偏り、最終的には体調を崩す、こうしたイメージもできるかもしれません。

サイバーカスケードだけでなく、様々なバイアス(偏り)を防ぐような心構えが求められます。

だからこそファクトを意識する

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

サイバーカスケード化を防ぐためにまず意識したいのは、多種多様な人をフォローし、タイムラインに多様性を持たせることです。
フォローするということは、相手に通知が届き、可視化されてしまうため、ためらいが出ることもあるでしょう。その場合は「非公開のリスト」を作り、第三者に知られない形で、情報を得ることができます。

また新聞やネットニュースなどのメディアと接する場合も、特定のメディアにふれるのではなく、複数のメディアから多様な論調を得ることも大事です。情報を多角的に見るということですね。

最後に、こうしたサイバーカスケードを意識するにあたって、一番大事なことはファクト(事実)を意識するということです。
偏らないように意識しても、ファクトに基づかない情報、デマや噂などを混ぜてしまうと全てが台無しです。バランスのいい、理想的なバイキングの盛り付けをしても、1つでも食材が傷んでいると食あたりを起こすことと同じですね。

情報が溢れ、自由に受け取れるネット時代だからこそ、サイバーカスケード、そしてファクトを強く意識して使うのです。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」6月30日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/