演芸集団FECの団長で、沖縄お笑い界を代表する一人「ハンサム・仲座健太(なかざ・けんた)」さん。ナビゲーターの「初恋クロマニヨン・松田正(まつだ・しょう)」さんは以前FEC所属でとてもお世話になったそうですが、お互いにどこか似ていると思うそう。「シンパシーを感じる一人。自分もしょうも昔は尖っていました。稽古なんてバカらしいと言って参加しないタイプでしたがライブで一番になるのがしょう。負けるのが僕でした」と笑っていた仲座さん。今でも時々交流を持ち、お互いを気に掛けるすてきな関係のようです。
(執筆:フリーライター・饒波貴子)
「沖縄芸人ナビ」は毎週木曜発行の「週刊レキオ・沖縄芸人ファイル」と連動中。毎月第3週のレキオに関連記事を掲載していますのでご覧ください。
仲座健太さん(左/FEC所属 http://www.fec.okinawa/)とナビ芸人の松田正さん(よしもとエンタテインメント沖縄所属/http://yoshimoto-entertainment-okinawa.jp/)。解散危機から現在の取り組みまで、活動を振り返る対談に。「自分が一番面白いと思って芸人になるのが当たり前。見られ方を気にする若手がいると、時代なのか!?と思ってしまう」など、本音がこぼれる場面もありました。
地元・南風原を突き詰め、マクロではなくミクロへ
松田ナビ:3年前、この連載は「3事務所解体」ということで、FEC団長の仲座さんのインタビューからスタートしました。今回は個人について伺いますが、最近ダイエットをしているようですね。番組の企画ですか?
仲座:そう、テレビ番組「Aランチ」で、10キロ減を目標にトレーニングしました。
松田ナビ:僕がFECにいたころの仲座さんみたい! 変化は感じますか?
仲座:週3回ジムに行って、行かない日は家でトレーニング。その時間って今まで何をしていたかと振り返ると、だらけていたやっさ~って、で~じ(すごく)思った。
番組企画でトレーニングに通い、「2カ月でマイナス10キロ」の目標を見事達成!
松田ナビ:僕も「家のソファーに座っていたら、4時間経っている!」って驚くこともよくあってマラソンを始めました。仲座さん、ネタはどこで書いていますか?
仲座:家にはワラバー(子ども)がいるし、自然にスイッチがオフになって何もできない。だからネタを書くのは事務所で、相方の金城さんと話しながらネタを作っていくスタイル。
松田ナビ:僕らが昔FECにいたころ、仲座さんはみんなを引っ張っていくリーダーでした。今はどんな立ち位置ですか?
仲座:定期公演や番組配信などをまとめたり、現リーダー「わさび」の相談役をしたりという感じかな。ヒントは出そうと思うけれど、決定権は持たずに渡すことを大事にしている。
松田ナビ:以前のような鬼軍曹ではないんですね(笑)。後輩を萎縮させず、お前らの発想を持って来いというスタンスですか?
仲座:昔みたいに怒っていないし、何なら笑わせるのが優先。最近は毎月のライブにお客さんを入れるかどうかという話になるわけさ。俺は陰な空気を出す方だから、その過程で苦しくなる。煮詰まってきたら「ぎぼっくす」をいじって笑いの方向に持って行ったりするね。
祝・結婚! ヘディングに挑戦し幸運をキャッチした<ぎぼっくす さん>◇沖縄芸人ナビFILE.34
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-1338777.html
松田ナビ:「お前たちは何を言っても響かんな!」とか、みんなを怒ったりしていないんですね(笑)!?
仲座:思っているけどもう言わない(笑)。でも同じ南風原出身の「ただのあきのり」には、したたか(めっちゃ)言っている。「分かってはいます」「考えてはいます」って答えてくるよ。
松田ナビ:「分かります」の間に「は」を入れる人って腹立ちますよね(笑)。今の仲座さんは、やわらかく全体を見ているんですね。今年FECの事務所内にスタジオを開設し、配信番組などを取り仕切っていると聞きました。コロナ禍で始めた事業ですか?
仲座:そう、スタジオ関係を担当している。社長の智二さんに言われてよく分からないまま始めたけれど、企画もネタも動画配信できるからスタジオがあって本当に良かった。無観客ライブは有観客に比べて経験値が増えにくくてもどかしいけれど、観客を入れるか入れないか悩むことは大きく見ると貴重な経験。普通にライブができるようになった時、コロナ禍の時は毎月悩んでいたと過去を振り返るだろうね。
松田ナビ:配信に取り組んでいるところは多いですが、FECは活気があると感じます。スタッフも協力しながら笑いあって、活気が伝わってくるんですよ。
仲座:やって良かったなと思っている。仕切っている側にいるけれど俺は実質何もやっていなくて、みんなが楽しんでくれたら、という気持ちです。
松田ナビ:仲座さんはあまり出ていないんですか?
仲座:そこまで出ていない。配信関連と定期ライブ「お笑い劇場」は事務所底上げの一環で、相談役としてやっているけど、地固めして今の立ち位置から抜けようと、自分のためにやっている面もあるんだよね。いずれコンビのことや自分のことに集中したいから、その時までうっちゃんなげない(放置しない)ようにやっていきたい。
松田ナビ:ゆくゆくは譲っていくんですね。自分のYouTubeは、地元・南風原町喜屋武の方と一緒にやっていますもんね。
仲座:去年から取り組んでいて、YouTubeは先輩・同級生とやっている。
松田ナビ:僕も地元・読谷の友達と何かやりたいので、うらやましいです。やっぱり楽しいですか?
仲座:楽しい。コロナに関係なくずっと続けたい。今の自分にはマクロに行く考えはなくて、ミクロに行くべきと考えている。これからは東京を越えてアジア進出だという声や、グローバルとローカルを混ぜてグローカルという考えがあるようだけど、それは会社や経済の向かい方。個人ではいざ方向性を広げた時に核がないと薄くなると思っていて、俺はミクロに原点の「南風原」を突き詰めていきたい。まだ知らないことも多いし、自分がいいと思う地元の話題をどうやってお笑いに昇華できるのかと考えている。
松田ナビ:南風原では劇団の主宰もしていますね。
仲座:「海」という劇団をやっていて今年冬公演を開催。YouTubeチャンネルは2つやっていて、1つは南風原町に特化した南風原町観光協会の「兼城十字路チャンネル」。自分で編集もしている。金城さんと一緒にやっているのは趣味。しゃべる時間が少ないから開設したようなもの。
松田ナビ:コンビのコミュニケーションツールなんですね(笑)。南風原では他にも活動していますか?
仲座:地元での活動を仕事にしたいし、ゆくゆくはFEC南風原支部を作りたい。南風原で仕事を獲得して出張で那覇に来たいと思っている。観光ガイドなど参加者側の気持ちをくみ取っての案内役とか、しゃべるのが得意な人がやると盛り上がったりするのではないか、など模索中です。
◆護得久流民謡研究所:https://www.youtube.com/channel/UC5f1k_3u5g437d1LOIHVIlQ
◆兼城十字路ch・南風原町観光協会:https://www.youtube.com/channel/UCrLEU0ZalPO1yVtgiXd1JgQ
松田ナビ:何か見えてきたことはありますか?
仲座:「兼城十字路チャンネル」は1年前に南風原町観光協会のYouTubeチャンネルでスタートさせてもらっているけど、中身は基本「あきのり」と2人で作っている。南風原を取り上げてくれたと感謝され、話が来始めているので少しずつ仕事になればいいなと思っているよ。
松田ナビ:めちゃくちゃ有意義ですね! 僕は読谷の伊良皆出身で、極端にいうと伊良皆から出たくないくらいの気持ちがあったりします。
仲座:しょうを見ていると、発想など地元・読谷がベースになっているなと思う。
松田ナビ:不思議とネタに出ますよね。仲座さんのネタにもそういう発想があると思えます。
仲座:今年の『お笑いバイアスロン』の初恋クロマニヨンのコントはまさにそう。狭いテリトリーだけで生きる人だった。
松田ナビ:本当にそう(笑)。「会話のテリトリーを広げる先輩」というコントで、嫌な先輩役は自分に近いです(笑)。そのシンパシーからも、ミクロが大きな仕事になるのは僕の憧れです。
解散危機を経て誕生した、護得久栄昇先生
松田ナビ:人気が続いている護得久栄昇先生。ブレイク当初はどんな気持ちでしたか?
仲座:初恋クロマニヨンごめんね、という思いが一番だったかな。
松田ナビ:2017年の『O-1グランプリ』ですね(笑)。大会後にブレイクし、開催後の年始のあいさつ回りで護得久先生に記念写真をお願いしたら、耳元で「ごめんな」と言われました(笑)。優勝したのは僕たちでしたが、護得久先生にとって『0-1』は単なるきっかけで、そこからがスゴかった。仲座さんはどんな心境でしたか?
仲座:俺と金城さんの中では「護得久先生」は、コントの一つ。どんどん広がってビックリしたけれど、振り返ってみると金城さんに一番フィットしていると思う。地元の話につながるけれど、護得久栄昇というキャラは南風原喜屋武の先輩たちが元ネタ。みんな、うしえてる(調子にのっている)わけよ。でも一緒に酒を飲むと酔っ払ってぐでんぐでんになるし、裸足で家に帰ろうとしたり、威張っているけど脇が甘い(笑)。
松田ナビ:まさに護得久先生!
仲座:身近にいる威張っているシージャ(先輩)を重ねて、護得久先生で表現してストレス解消。それはやっぱり演じている金城さんの人柄だな~と感じる。
松田ナビ:先輩たちに実際に意見を言ったり、護得久先生と『マツコ会議』などの県外の番組に出る時でも、仲座さんはいつでも仲座さんのまま。僕だったらちょっとテンパったりこびたりするかもと思えますが、「そのままでいこう」と決めていますか?
仲座:護得久先生とのギャップをどう出すか、という陰影かな。メインはやっぱり護得久先生で俺は解説者としているので、突飛なことをしても喜ばれないしね。イベントで護得久先生が出て盛り上がって、俺がイジると更に盛り上がる。でも俺ありきでボケたら全然ウケない。それどころか、みんな護得久先生を見ているわけ。なるほどと自分の立ち位置が分かり、一歩下がるくらいがみんな喜ぶと思っている。その方がやりやすいしね。
松田ナビ:護得久先生を出す前の金城さんと仲座さんという見方をすると、立場が逆。仲座さんがワ~ッと前に出て、金城さんが横からアホなツッコミをする形でした。それが護得久先生の登場で逆転しましたが、実は居心地が良かったりします!?
仲座:とっても居心地がいい。役割が反対になって不満だったり、相方に嫉妬したりないのと聞かれるけれどゼロ。
松田ナビ:そう聞くと、昔の仲座さんはどこかにフラストレーションみたいなものがあって、その状況を打破するために前に出ていたと思いました。
仲座:それは金城さんへのいら立ちがあったのかも。「もっとできるはずなのに、なんでやらんば~」という気持ちだったけど、結局自分自身にいら立っていたんだよね。自分のイメージを金城さんに求めるからできない場合もあるのに、それに気付いていなかった。
松田ナビ:分かります。その連続だと思います。僕らもありますね(笑)。護得久先生ブレイク以降、コンビ仲は良くなったということですね。
仲座:とっても良くなった! いら立ちから解散するコンビやトリオは多いだろうし、最終的に相方をリスペクトできるかどうかに尽きる。護得久先生をやる前の年、一番激しいケンカをして解散する話にまでなったからね。
松田ナビ:え!? 解散まで考えたんですか?
仲座:そう、2015年夏に「那覇対40市町村連合軍」というコントをやって、内戦が起こって那覇出身の金城さんに連合軍の俺が「お前は今日から南風原町民だから南風原音頭を歌え」と命令する内容だったわけさ。結局歌えていないというオチなんだけど、CD聞かせて練習もしているからある程度歌えるようにはなるはずなのに全然歌えなくて、本番では俺に叱られて萎縮しちゃう。終わった後「ならんさ~(どうしようもないな~)、次のネタ早く考えてこい!」と、ひどい言葉で言い放ったわけ。過去にも同じようなことがあったけど、この時は金城さんが魂の抜けたような目になって、数日後に「もう仲座とできないやっさ~」と言ってきた。その時俺は、金城さんのせいにしている自分のことがとっても嫌になったんだよね。
謝りながら「気持ちは分かったけれど解散したくない。半年後に改めて話し合おう。その時解決できなかったらコンビを辞めよう」と伝えました。しばらくは一人でピンネタを作ろうと決め、社長にも報告。いつもは「や~ぬ言い方がわっさんば~(お前の言い方が悪いよ)」と金城さんに言われて謝って元どおりだったけれど、いつもとパターンが違ったから驚いたんだはず。この時は金城さんから急いで話し合おうと言われ、やっぱりコンビを続けようってなりました(笑)。
それで復活したんだけど俺も深く反省して、「金城さんに責任を押し付けないようにするので、やるべきことはやってほしい。自分もちゃんとやります」と伝えて、南風原で単独ライブをやりました。禊(みそぎ)として例の南風原音頭のネタをやりました。相変わらずあにひゃ~(あいつ)は歌えなかったけどね(笑)。
松田ナビ:「金城さん、俺は人として成長したよ」と見せるためのネタだったんですね(笑)。
仲座:相方は成長せずに歌えないままだったけど、半年後に護得久栄昇というキャラクターが生まれた。いろいろとタイミングが重なったかなと思うね。
松田ナビ:タイミングってあるんですね。護得久先生が生まれていなかったら、またケンカして関係が悪くなることもあったかもしれません。
仲座:でもそこで関係性を見つめ直せたから、それぞれが気持ち良さを感じるコントが生まれたのかなとも思うね。
松田ナビ:僕らも数年前に解散するか考えた時期があって・・・。僕があれこれ言ったら新本がさっきの話の金城さんのような顔になり、辞めようかという雰囲気になりました。
仲座:そんなことがあったんだ(笑)。初恋クロマニヨンはバランスがどんどん良くなっている。8月の『お笑いバイアスロン』優勝後、最後のありんくりんとのやり取り。しょうがありんくりんをイジって新本がのっかってきて、憲吾がスイミングスクールの話をして、それぞれの立ち位置でしゃべっていた。お互いに依存しないバランスが最高だと思えたよ。
松田ナビ:エンディングの細かいところまで見てくれて、ありがとうございます(笑)。個々を出せるようになったのは最近からですし、年齢重ねて良い距離感を覚えてきたと思っています。ハンサムさんほど良い関係ではないですけどね。金城さんとコンビを組んだきっかけを教えてください。
仲座:事務所に入ったのは1996年のオーディション。俺が一期生で、金城さんは半年後の二期生。4年くらい別の相方とやっていたけれど、解散して余った者同志で組みました。当時は(放送作家の)キャンヒロユキさんやヨッキー(空馬良樹)さんも一緒にライブをやっていた時代で、お互いのことをよく知っていた。「コンビ組もうぜ」と誘ってきた金城さんのことは面白いと思っていたから、「組もう」って答えたよ。でも金城さんは自動車整備士として働いていたので、「俺はお笑いで食っていきたい。金城さんが趣味でお笑いをやるつもりなら一緒にできない」と伝えた。その上で「やろう!」という返事がきたので、正式にコンビになりました。
松田ナビ:当時金城さんがしーじゃ(年上)で、仲座さんは20歳そこそこ!? 若いのにはっきり言ったんですね。
仲座:23歳くらいでお笑いやって3~4年経って、面倒くさいことは嫌だったわけ。最初は友達とのコンビで大学が忙しいからネタ休むとか言われ、そんなテンションではお笑いできん! と思って。俺が引きずり込んだ友達だったから、申し訳ない気持ちもあったしね。だからテンションが違う人とやってもお互いに得しないという思い。正社員だった金城さんには確認しておきたかったんだよね。
松田ナビ:若いから言えたかもですね。今だったら、正社員の人に言えませんよね(笑)!?
仲座:そうだな。そこまで責任持てんしな(笑)。金城さん、まだ家族がいないころだったからバイトになっても大丈夫だったけど、背負うものがあったらできなかったと思う。
目標は沖縄統一!? 後輩には背中を見せたい
松田ナビ:FECのオーディションを受けたころから、お笑いで食っていくと決めていましたか?
仲座:ダウンタウンさんと笑築過激団さんに影響を受けて、「俺が沖縄でお笑いをやらないと誰がやる」という使命感を持ってFECのオーディションを受けたんだけど、入団したら俺がやらんでも先輩たちがやっていた(笑)。しかもしに(とても)面白いお笑いをばんない(たくさん)やっていたよ。同級生によると、当時の俺は「一年で沖縄を統一する!」と言っていたらしい(笑)。統一って、ぬーやが(何か)!?
松田ナビ:仲座さんは歴史も好きですからね(笑)。仲座さんのこと、昔は怖い先輩だと思っていましたが、今こういう風に顔を突き合わせて話すと、僭越(せんえつ)ながら似ているなと思うところがあります。お笑いに対する最初のモチベーションも似ていると思いました。大人にはなりましたけど、どこかフラストレーションがある。
仲座:居心地が良くなかったら全体を変えようという思いが出てくる。例えば昔だったら芸人のことを考えて、「もっとやりやすくできるでしょう」ってスタッフに突っかかっていたけど労力を使うし、自分一人の力では変わらないわけさ~。軋轢(あつれき)生んで、やりにくい人って思われるだけ。それでもいいと思ってきたけれど、何も変わらないし俺の道も狭くなって誰のためにもならない。最近は大分考え方が変わってきたよ。
松田ナビ:まろやかになったんですね。中身は変わらなくても、喋り方を覚えてきたというか(笑)、丸みを帯びていきますね。
仲座:だいぶね! 基本は変わらないけど、考えや伝え方を変える。最近はシステムの中でいかに自由にやるかということを考えていて、まずは求められたことを100点満点で返し、その後に自分のやりたいことをやる。売れてからやりたいことはやる、ってよく言うさ。遅ればせながらそうしていくのがいいと考えるようになりました。
松田ナビ:でも全体のために、ちゃんと意見を伝える仲座さんはすごいです! 僕を含め陰で不満を言って終わる人も多い。言い続けてきた仲座さんの存在はありがたく、悪者を買って出てくれていることに感謝します。でも、つらい思いをしてきたでしょうね。
仲座:誰からも話しかけられなくなり、それが25年続いている(笑)。
松田ナビ:仲座さんはイジられたくない人のイメージがありましたが、「実はイジられたい」とYouTube動画で発言しているのを見て意外でした。後輩がワーッとイジってきたら、気持ちいい感じになるんですか?
仲座:イジられた時の返しがないから、イジられたくない雰囲気を出しているだけ。イジられて面白い人もいっぱいいるから、あんな風にできんやっさ~というコンプレックスもあるよね。武器がなくてもイジられたら大声で笑えばいいや、と今は思える。居心地いいなと感じているよ。
松田ナビ:何も言われなくなるのは怖い。イジられたり何か言われたいですよね。
仲座:FECの後輩には、事務所の上下関係で萎縮したりせず飛び越えてほしい。沖縄のお笑い界も同じで、事務所とかそれぞれの思いがあっても、どうでもいいんじゃないかなと思うね。発言を求められることはあるけれど、俺は俺で頑張るよ。
松田ナビ:沖縄のお笑い界。盛り上がっているような空気もあったりしますが、仲座さんは全体をどう見ていますか?
仲座:とっても心配。コロナ禍とは別に、みんながある程度いろいろできてメディアに出たり仕事があるけども全員が食えているのかとなると、全然そんなことないさ~ね。ちょこっとだけ仕事がある環境なので、そこ止まりに感じているんだよね。以前はメディアに出る機会や仕事もあまりなく、「こんなところでやってられるか! もっと上へ行く!」という感覚があったけれど、沖縄でチャンピオンになるとかM-1で有名になるとか、売れるという強い気持ちが伝わってこない。思っている人はいるだろうけど、ギラギラしたものが見えないから難しいんじゃないかな~と思ってしまうね。沖縄のお笑い界が盛り上がっていると言っても、お客さん集めるのに四苦八苦しているのが内部事情。お笑いをやっている当事者たちがもっと上に行かないといけないし、停滞しないでほしい。
松田ナビ:誰でもメインMCになれる時代。しかも家にいながらタレントさんのような顔になる。面白い方向にしっかりと向かえているのか・・・考えるところがあります。
仲座:前なら、そんな思いを言葉で伝えることもあったけれど、今の俺たちは背中で見せていく世代。追いかけてくれ、ではなく「俺たちがこの道にいる姿」を見せる。後輩は先輩が歩くいろんな道を見て、「あそこなら行けそう」「こっちは通っても意味がない」「良いと思えないから自分たちで道を作ろう」とか、そんな風になってくれればいいなと。背中を見せている過程で辞めていく人たちもいるけれど、それは仕方ないよね。
松田ナビ:そうですね。本当の意味で盛り上げたいですね。
仲座:新人が入ってしょうがその子を抱え、給料も生活費も渡せるよってなった時に初めて沖縄のお笑いが確立されたと思うはず。アルバイトではなく、弟子か付き人として若い子が携われる状態。そんな風に考えると今は全然だよね。
松田ナビ:仲座さんの背中、これからもずっと見せてください。
仲座:お前たちは違う道を進んでいるだろう(笑)!
松田ナビ:コンビと個人、それぞれの展望を教えてもらえますか。
仲座:個人ではやっぱり南風原でどう生きていけるかということ。YouTubeや劇団などで町に関わらせてもらっているけれど、掘り起こしていけば楽しいことがもっとたくさんある。それが仕事になればいいなと思うし、南風原で必要とされる人になりたい。南風原にFECの支部を作って、新しい仕事を生み出すのが個人の目標です。
コンビとしては、80歳になっても二人で漫才すること。金城さんにも伝えたんだけど、首をひねっていて、「うん!」と即答してもらえていない(笑)。少し前までは、怒りなどの感情のぶつかり合いが面白いと思って漫才をやっていたんだけど、それは80歳まではできないな~って思う。オジーになってもできるしゃべり方やテンポにシフトチェンジしていきたいです。
松田ナビ:仲座さんは漫才が好きですよね。年齢に合わせて作る気持ちがあるんですね。ハンサムさんといえば漫才のイメージですが、コントばかりやっている時期もありましたよね?
仲座:やっぱり漫才が好きだな。無理をせず、リズムもテーマも80歳に向けて作っていきたい。コントは苦手だったからたくさんやらんとって感じでやっていたんだけど、いまだに恥ずかしいわけさ。カツラや衣装を着けたり、照れくさいな~(笑)。改めて大ベテランの漫才コンビはやっぱり面白いとも思うしね。 「夢路いとし・喜味こいし」さんは、しにはんじゃーで(死にそうになりながら)サンパチマイクの前まで歩くだけで面白かった。最近見た「青空球児・好児」さんは、力がなく物覚えもちょっと悪くなりながら、さらに面白くなっている。本当にすごいな~と思えるな。
松田ナビ:内容もしっかり面白くて、とんでもないですよね。演者の今を体現するのが漫才、ということかもしれませんね。
仲座:ベースにあるのはネタ。でも最終的には、漫才師の人間性だと思っています。
【対談を終えて・・・】
☆仲座健太☆
しょうと話すのはいつも楽しい。「早く内地に行けばいいさ、実力があるんだから」と前は言っていましたが、最近は沖縄だから出せる力もあるのかな、ここにいるからこそ広がっていくこともあるのかなと感じます。どちらにしても「早く売れれよ!」。過小評価されている初恋クロマニヨンの実力が、早く世の中の人に届いてほしいです。まずは「沖縄芸人といえば初恋クロマニヨン」と県民の誰もに認められ、内地のテレビに出てドスンと存在感を出してほしいです。
☆松田ナビ☆
勝手ながらお兄ちゃんのような存在だと思っています。僕が迷っている時などに声を掛けてくれ、何年かに一回は説教に近いアドバイスをもらい(笑)、意識を変えられたことが何回かありました。大感謝して尊敬しています。「あなたのことが本当に好きです」という僕の気持ちが伝わるインタビューにしたいと思って今日を迎えましたので(笑)、その願いもこめて楽しい時間になりました。
【プロフィール】
★仲座健太(なかざ・けんた)/ハンサム
生年月日:1976年4月2日
出身地:南風原町字喜屋武
趣味・特技:野球・幕末・喜屋武の綱引き、南風原の事全て
Twitter:@nakazasenpai
★松田 正(まつだ しょう)/ 初恋クロマニヨン
生年月日:1984年8月22日
出身地:読谷村
趣味:ソフトボール/漫画
特技:野球
Twitter:@hatsukoimatsuda
【インフォメーション】
【演芸集団FEC 旗揚げ28周年記念公演】
~旗揚げ28周年記念公演 week~
◆10月10日(日)15時~17時@沖縄市民小劇場あしびなー
「お笑い米軍基地2021 in 沖縄市」
前売2,000円/当日3,000円
◆10月16日(土)13時50分~20時@テンブスホール
「ネタだらけの6時間」※有料配信あり
6時間笑い放題プラン 2,500円/1ライブ 1,000円
配信視聴チケット(全公演通し) 2,000円
◆10月17日(日) ①14時~16時、②18時~20時@テンブスホール
「お笑い米軍基地2021 in 那覇」※18時の回は有料配信あり
料金:前売2,000円/当日3,000円
配信視聴チケット:1,500円
チケットはこちらから→TIGET(https://tiget.net/users/149383)
お問い合わせ:FECオフィス 098-869-9505(平日10時~19時)
初恋クロマニヨン 月1定期ライブ 「初恋クロマニヨン、出番ですよ!!」
日時:9月26日(日)開場17時45分/開演18時
料金:前売り・当日共に1000円 有料配信¥800⇒【GoToイベント対象公演】¥640
内容:ネタ・トーク・企画など毎月さまざまな内容で開催。今月は何が飛び出すか!? 来場してお楽しみください。(公演時間約60分)
会場:【よしもと沖縄花月】
那覇市前島3-25-5 とまりんアネックスビル2階 (マップはこちら)
お問い合わせ:098-943-6244
公式サイト==>http://www.yoshimoto.co.jp/okinawakagetsu/
饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。