「島ぜんぶでおーきな祭 第15回沖縄国際映画祭」クライム・アクションの話題作に主演、韓国人気スターのユン・ソンモさんが来沖!


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4月に行われた「島ぜんぶでおーきな祭 第15回沖縄国際映画祭」は県内最大級のエンターテインメントの祭典。国際通りレッドカーペットをはじめ映画上映・ステージイベント、多数のプログラムが開催されました。たくさんのエンタメ関係者が参加した中、今回は7月21日の全国ロードショーを控え、先立って上映されたアクション映画「ランサム」の関係者にインタビュー。

身代金争奪戦に加わる謎めいた誘拐犯を演じた韓国の人気グループ「超新星」出身のユン・ソンモさん、大林宣彦監督の遺作「海辺の映画館-キネマの玉手箱」に主演し脚光を浴びた若手女優・吉田玲さん、アクション系を中心に数々の作品を手掛ける室賀厚監督に見どころや裏話などを語っていただきました。

聞き手:饒波貴子(フリーライター)

「アジアン・アクション新時代」を宣言し、アジア映画界に新風を吹き込むと公開前から話題になっている日本映画「ランサム」。4月の沖縄国際映画祭でプレミア上映され、(左から)室賀厚監督、ヒロイン役の若手女優・吉田玲さん、誘拐犯を演じた韓国俳優のユン・ソンモさんがレッドカーペットを歩き、舞台あいさつに登壇。インタビューにも応じてくれました。

盛り上がったプレミア上映

―沖縄国際映画祭に参加する気持ち、思い出を教えてください。

ソンモ:主演作「ランサム」で参加することができて、とてもうれしいです。過去にも参加したことがあり、楽しい映画祭だったことを覚えています。

監督:10年くらい前にレッドカーペットを歩いた経験があり、今回は2回目の参加になります。初参加だった前回はとても緊張してあまり覚えていませんが(笑)、ものすごく盛大な映画祭という印象でした。コロナ禍から落ち着いてきて、ゲストが来るのは数年ぶりと聞いています。国際通りを歩くのも初めてですし、今回のレッドカーペット開催をとても楽しみにしています。

(C)沖縄国際映画祭/(株)よしもとラフ&ピース

―主演俳優のお2人と一緒に歩くのも楽しみですね! 大歓声を浴びると思います。

監督:そうです。ソンモさんを先頭にそばには吉田さん。数メートル離れて、ついて行こうと思っています(笑)。

吉田:私が前の方なんて、とんでもないです(笑)。沖縄に来るのが初めてなので、全てを楽しみにしているんです。

―舞台あいさつを終えたそうで、お客さまの反応は伝わってきましたか?

ソンモ:盛り上がってくださったようですが、怖くて見られないという方もいました。激しいアクションシーンのある映画なんです。

監督:面白かったですかと直接聞きたかったですが、良いタイミングがありませんでした。でも会場の廊下で会った数人の方に「面白かった」と言っていただけました。直接の反応をもっと聞いてみたいですね。

ソンモ:InstagramやTwitter、SNSにガンガン感想が出てくると思います(笑)

―7月に全国公開ですから、みなさまの感想が気になりますね。

ソンモ:はい、気になります。

監督:沖縄国際映画祭での上映が、初お披露目となりました。

―拝見させていただき、オープニングから映像も音楽もカッコいい! 都会的でクールで、ソンモさんのイメージに合う見応えのある作品だと思いました。

ソンモ:ありがとうございます。

監督:ありがとうございます。「街中にいるソンモさん」というシーンをまず狙って撮影しました。

―吉田さんはかわいそうな役。始まってすぐに…(笑)。

吉田:はい、そうなんです(笑)。

監督:悪いヤツじゃなく唯一かわいそうな人が彼女です。

ソンモ:その通りですね。誘拐されてしまって(笑)。

監督:1曲終わったらすぐですからね(笑)。

―驚きの展開で、目が離せなくなりました。

公開前に「続編」を構想中!?

―本格的なクライムアクション作品ですね。現場は過酷でしたか?

監督:過酷でした(笑)。俳優さんたちのスケジュールがタイトで、予算的にも恵まれている訳ではないのでギュッと凝縮して撮影しました。ですがアクションものなので、たくさんのパーツを撮らなければならない。結構粘って撮り続けたんですよ。

―都会的な風景を挟んでいるのも監督のこだわりでしょうか?

監督:誘拐した女子大生を閉じこめておく設定です。風景などを多く入れないと映像に広がりがなくなってしまうので、身代金の取り引きは車を走らせ高速道路を使うなどいろいろなところに行かせました。広がる描写を持ちつつ、アクションはあえて閉じこもった室内で見せて、狭いだけの映画にならないようにしました。

―ソンモさん、犯罪用語など言葉が難しい作品だと思いましたが、撮影時はいかがでしたか?

ソンモ:言葉が一番難しかったです。アクションの練習は事前にできるだろうと思っていましたが、日本に来てすぐ撮影が始まったんです。なので少し自信がなかったのですが、室賀監督がアクションや演技、細かい仕草まで実際に見せてくれて楽しく撮影できたと思っています。めちゃくちゃ楽しい現場だったんですよ。

―拳銃やナイフを手に、アクションシーンをすてきに演じていました。

監督:ソンモさんはやっぱりうまく演じますね。韓国の俳優さんは兵役に就き銃を持つ機会が実際にあるので、構え方がリアルでさまになります。

ソンモ:撮影前にアクションスクールに数回行きました。実は別映画の撮影のために行ったのですが、その映画は辞退。教えてもらったアクションは、「ランサム」で使わせてもらいました(笑)。両方主演で、1本は韓国のアクション映画。そして「ランサム」は日本のアクション映画。時期が重なってしまったので、挑戦したいと思った「ランサム」を選んだんです。コロナが落ち着くのがいつになるのか予想できない中、監督さんが待ってくれてありがたかったです。

監督:企画が頓挫したりクランクイン前にストップしたりなど、映画にはそういう場合もありますが、コロナの予測は非常に難しかったですね。準備はできているんだけど、本当に撮影まで進めていけるのか!? ソンモさんは日本に来ることができるんだろうかということもありましたし、いろんな不安がありました。この作品を選んでもらえてうれしかったですよ。

ソンモ:いろいろありましたが、完成して本当にうれしかったです。

―吉田さんは韓国語をしゃべるシーンがありました。どんな風に練習しましたか?

吉田:ソンモさんに教えていただきました。台本にカタカナで読み方を書いていただいて、何回も何回もやり取りして練習しました。でも汚い言葉なので、ソンモさんはすごく嫌な気持ちになったと思います(笑)。

ソンモ:気持ち悪かったです(笑)。

吉田:長い時間練習に付き合ってくれて、ありがとうございました。

―悪人役の怖い方たちに囲まれた撮影。いかがでしたか?

吉田:みなさん、普段はめちゃくちゃ優しかったですよ(笑)。

監督:そうなんですよ。見てくれは怖そうですが、吉田さんには優しかったですよね。他の人にはわかりませんけど(笑)。

ソンモ:みんな、本当に優しい方ばかりです。

―吉田さんは出てきた瞬間からつらい役。演じ切りましたね。

吉田:そうですね(笑)。

監督:なんでこんな目に遭うんだろうっていう(笑)。ずっとテープを目に貼っていたのでかぶれてしまい、申し訳なかったです。あんな扱いされると、アクション映画が嫌いになってしまいますね。

吉田:テープを貼られて我慢していたら、いつの間にか真っ赤になった部分があって(笑)。でも誘拐されることは人生の中で日常で起こることではありませんから、貴重な経験になりました。楽しい撮影でした。

―ソンモさんが思う、本作の見どころを教えてください。

ソンモ:たくさんのアクション映画がありますが、室賀厚監督の個性が出ている、伝統的なハードボイルドアクション映画に仕上がったと思っています。出演者の存在感だけではなく、いろいろな魅力が詰まっています。アクション好きな方は、オタクになるくらいすごくハマると思いますよ。そして玲ちゃん演じる誘拐された女子大生のこと、僕とテラ(寺中寿之)さんが演じた男たちの友情などのエピソードもあり楽しめます。ぜひみなさん、何回も見てください!

―ソンモさんが教師を演じる場面もありましたね。

監督:ソンモさんのファンの方は、ああいう姿をもっと見たいのかもしれませんね。

―知的でさわやかですてきでした。ラストシーンはハッピーな予感がしましたね!

ソンモ:続きは「ランサム2」で(笑)。

監督:そうだね、続編ができるといいですね。小沢仁志さん演じる、暗黒街のボスが誘拐されるのはダメでしょうか(笑)!?

吉田:では、私が黒幕になります(笑)!

ソンモ:ボスの娘が黒幕に(笑)!?

―続編の構想がどんどん出て楽しみになってきましたが(笑)、監督が思う見どころは!?

監督:甘いマスクの人気者のソンモさんをワル側に置いたクライムアクション、というのが僕にとっての一番のポイントでやりたかったこと。最近のキャラクターでいうとかわいそうな人物を描くことが多いのですが、本作は玲さんが演じた役を除くとかわいそうな人は一人も出ません。自業自得で死んでいくヤツらばかりなんです。そして3つのキーワードで本作を表現すると、忠誠・裏切り・友情。ソンモさんが演じるイ・ソジュンは親分に対しての忠誠心のラインがあって、絶対裏切らないんだけど最後は親分の娘を思っての行動もあります。そんな風に忠誠を外さないままで何をやるか。最後に仲間を助けるために戻る場面があって、そこは忠誠の中に裏切りが入っています。悪党同士に芽生えた奇妙な友情もありますし、3つのキーワードを軸にしたカッコよさを描いているところですね。逃げて行けばいいのに残してはいけないヤツがいると思って戻る場面もありますし、ぜひ見ていただきたいです。

(C)沖縄国際映画祭/(株)よしもとラフ&ピース

―吉田さんのおすすめポイントを教えてください。 

吉田:初めてのアクション映画でしたが、「なんでこんなにカッコいいの!」と思えた作品です。映画音楽が元々好きなのですが、本作の音楽は本当にカッコよくてすごくハマりました。試写の時に音楽を担当された方にお会いしたら、監督は音楽にもとてもこだわり何回も連絡を取り合ったと教えていただきました。音楽の効果もあり、普段アクション映画に触れていない私のような方でも、見やすい作品だと思います。

(C)沖縄国際映画祭/(株)よしもとラフ&ピース

監督:アクションになじみのない方も見てくださるとうれしいですね。テンポよく見せたくて音楽にもこだわりました。

吉田:カッコいいし、スピード感があって面白いです。怖いんですけど怖くない、というか…なんて言ったらいいんですかね(笑)!?

監督:怖いんだけど、怖くないでいいですよ。

ソンモ:ドキドキします。

吉田:そうなんです。なので、みなさんにぜひ見ていただきたいです。

ソンモさん、雨男返上!?

―吉田さんは初めての沖縄とのことですが、来る前に何かイメージしていましたか?

吉田:海が気になっていました。見に行けたらいいなと楽しみにしています。

ソンモ:レッドカーペットの日は晴れそうですから、きれいな海を見ることができると思います。

―ソンモさん、沖縄の思い出を教えてください。

ソンモ:3回目の沖縄ですが、毎回台風や雨で観光をあまりしたことがないんです。室内で過ごして、市場で海ブドウを買ったりヘビのお酒を飲んだりしました。

―ハブ酒でしょうね。どうでしたか?

ソンモ:だまされて味見した程度です(笑)。いつかゆっくり来て、しっかり観光したいと思っています。沖縄はハワイに似ているイメージです。

(C)沖縄国際映画祭/(株)よしもとラフ&ピース

―来沖しても、あまり楽しんでいなかったのですね。

ソンモ:そうです。来て3日間ずっと台風だった時もありました。外に出てみようと思ってホテルで借りた傘を持って歩いたら、3秒くらいで飛ばされて傘がなくなっちゃったりしたんですよ。「もうダメだ」と思い、この辺には何がありますかとホテルの人に聞いたら「パチンコ屋しかないです」と言われました(笑)。

―残念な思い出ですね(笑)。ゆっくり来ていただきたいですが、お忙しいですね。今後の目標、特に日本での活動について教えてください。

ソンモ:良い天気の日にレッドカーペットを歩くことはうれしいですし、また沖縄に来ます! 歌手活動にミュージカル、これまでのようにいろいろなジャンルに挑戦していきたいです。歌うことが大好きなんです。そして4月から日本のドラマに出演していますので、これからは俳優としても成長していきたいです。韓国人の役だけではなく日本人など、いろいろなキャラクターを演じられるようになりたいと思っています。

―日本語がお上手ですから、これからのソンモさんにも注目します!

ソンモ:上手とはいえないので、日本語はもっと勉強しないといけないと思っているんですよ。

―監督、吉田さんの今後の予定を教えてください。

監督:本作で結果を出し、「ランサム」パート2の製作へとつなげていきたいです。他にもいろいろと構想はあり、やっぱりアクションが好きなんですよね。暴れる量を競っている訳ではありませんし、具体的に動いている企画はありませんが、悪いヤツらの話を描写していくことになると思います。

吉田:次の作品はまだ決まっていませんが、室賀監督にもソンモさんにもまたお世話になりたいです。これからもよろしくお願いします。

「ハイサイ気分」
ようこそ沖縄へ! 本土から来沖する有名人を歓迎する、連載インタビュー。近況や楽しいエピソード、沖縄への思いなどを語っていただきます。

◆インフォメーション◆

(C)「ランサム」製作委員会

7月21日(金)から全国順次ロードショー

『ランサム』

2023年/日本
監督:室賀厚
出演:ユン・ソンモ、小沢仁志、吉田玲、中村優一、寺中寿之 ほか

公式サイト https://ransom.jp
公式ツイッター https://twitter.com/ransom_movie

饒波貴子(のは・たかこ)
那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。