宜野湾市大山の国道58号沿いに並ぶ「アンティーク家具」「中国家具」などの看板。「このへんは家具屋が多いな」とお気付きの方も少なくないだろう。
でもどうしてここに家具屋さんが? どんなお店があるの? そんな不思議とワクワク感を胸に、ゆうき記者とたぶちゃん記者が宜野湾市大山の「家具屋通り(ファニチャーストリート)」をほろほろしてみた。
こだわりのアンティーク
早速目に入ってきたのは、店先にアンティークな雰囲気の椅子が並ぶ「USA Furniture」 1 。ドキドキしながら店に入ると、華やかで懐かしさを感じる家具が所狭しと並んでいる。きせさんカメラマンは「ワクワクしますね」とシャッターを切った。
店主の元井憲太郎さん(46)は、沖縄に来て3年。沖縄で暮らし始めた頃、この店に家具を買いに来たことをきっかけに、昨年、約30年続く店の“跡継ぎ”になった。米軍家具の払い下げから始まった店だが、今は米国やイギリスで直接買い付けた家具を扱う。
ものづくりが好きだという元井さんは壊れた家具のリメイクもする。店の入り口で存在感を放つドレッサーは「ミシン台を私がリメイクしたんだよ」とうれしそうだ。
手作りの温かさ
次に向かったのは、カラフルな看板がかわいらしい「mokumoku」 2 。店内には家具のほか、木製の時計や小物が壁いっぱいに掛けられている。県内8工房の職人が共同で経営。木の温かみを生かした作品が特徴だ。
オーダーメードや購入後のメンテナンスが頼めるのも、この店ならでは。職人の思いがこもった“一点もの”ばかりだ。
この日の店番はWOODYはる房の屋良朝治さん(47)と、夏休みの職場体験でレジに立つ娘ひかるさん(12)。「お父さんは木の素材を使い分けててかっこいい」と、ひかるさんの言葉に朝治さんも照れ笑い。作品だけでなく親子の温かみも感じた3人だった。
ネオンに誘われて
少し歩くと、店先にポップなネオンがキラキラ。3人は目を輝かせながらお店に入った。「Lucky7」 3 で迎えてくれたのは、島幸則さん(61)と看板犬のラッキー君。店は15年前に米軍基地内のクラブなどで使用したネオンの払い下げから始めた。
基地内でミラービールを販売していた知人から大量に買い取ったこともあり、バーに関するネオンや看板インテリアを中心に扱う。
「やっぱり派手さが魅力だね」と島さんが話すと、常連客の我如古令侍(りょうじ)さん(25)は「大好きな空間にいるだけで落ち着きます」と笑顔。ゆうき記者も「ネオンすごくいいですよね。私も好きです」。すっかりネオンのとりこになっていた。
ボリュームたっぷり
3人が見上げると「BOA SORTE(ボアソルチ)」 4 と書かれた大きなハンバーガーの看板。「おなかすいた…」。吸い込まれるように店内へ。
瀬長島から大山に移転し、昨年4月にオープン。夫婦で切り盛りする店内はアメリカ雑貨がセンスよく並べられている。バンズからあふれんばかりの肉、野菜を頬張る。「うまい…!」
店長兼オーナーの中村杏里朱(ありす)さん(34)は「看板犬のブン太に会いに来る人もいます」とにっこり。おなかも心も満たされた。
時代つなぐラタン家具
腹ごしらえを終えて信号を渡ると、緑色の店構えの「MARTAC(マータク)」 5 が見える。インドネシア出身のイカデック・スタネガラさん(36)が笑顔で迎えてくれた。
店内には、色鮮やかなハワイ風の家具が並んでいる。「南国に来たみたい」とたぶちゃん記者。家具はインドネシアにある自社工場で作り、籐(ラタン)家具を中心に扱う。
籐家具は1960年代ごろ、軍の払い下げで県民に出回ったことがあるという。この店で扱うのは新しく作った家具だが、オーナーの石井信也さん(45)は「年配の人にとっては懐かしさを感じる家具でもある」と話す。
以前は北谷で経営していたが「家具通りに店を出したい」と昨年大山に移転した。「家具を買いに来るなら大山に来てほしい」と石井さん。通りの人たちの心意気に「これから家具はこの通りで買おう」と心に決めた3人だった。
にぎわい生んだ中国家具
“アメリカ世”が形作った家具屋通り。1970年代から通りで「中國家具店」 6 を経営する2代目の成田和正さん(61)は「昔は中国家具をお土産に買う米軍の人が多くて、1カ月でコンテナ2個分の注文があった」と振り返る。
当時は大きな食器棚やびょうぶも人気だったとか。約40年前は12軒あったという中国家具を扱う店も客足が減り、今やごくわずか。5年ほど前から米軍関係者の客が減ったことが影響しているという。「今の人は家具にお金を使わないでしょ」とさみしそうにつぶやいた。
40年ほど前は基地内で使っていたアメリカ家具の払い下げ店も軒を連ねた。現在は基地内のアメリカ家具自体の価値が下がったことなどもあり、払い下げ店も減ったという。
かつての店舗が減る一方で、新たな家具屋、飲食店も集まる。大量消費社会の中で、今も“一点もの”の文化を発信し続けている。
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(2018年9月2日 琉球新報掲載)