父親からゴルフの才能を見込まれ、幼少時代は練習に明け暮れた。小学生の頃は大会で好成績を残したが、中学生になると伸び悩んだ。結果が振るわないと父親から罵声を浴びせられ、自分を責めた
▼数年前に取材した不登校の少女だ。父親との関係を話した。「クラブで殴られたときにもう駄目って思った」。それ以降、ゴルフをやめ深夜に街中を歩き回った。朝起きられず、登校できない日が増えた。父親はますます怖い存在になった
▼児童精神科医の佐々木正美さんは、著書「子どもへのまなざし」で、子どもが望んでいないことをさせ過ぎるのを「過剰干渉」と言い「親が自分の感情を満足させるためにやっていることが多い」と指摘する
▼児童虐待と言えば身体的暴力を連想する人は多いだろう。厚労省は言葉による脅し、子どもの前で家族を殴る行為も「心理的虐待」と定義する
▼福岡県内で当時1歳の息子にエアガンを発射し、けがをさせたとして、傷害の容疑で両親が逮捕された。息子は昨年肺炎で死亡し、顔や体にエアガンで撃たれたようなあざが残っていた。エアガンの発射が事実だとすれば背筋が凍る。人間の所業とは思えない
▼11月は「児童虐待防止推進月間」。児童憲章は「児童は、人として尊ばれる」とうたう。子どもは親の所有物ではない。安心して健やかに成長できる権利を奪ってはならない。