<金口木舌>吹き飛ぶ桜


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 消費税増税から1カ月余。家電や衣料などの市場では、増税前の駆け込み需要の反動減が出ている。全国に被害をもたらした台風19号の影響もある。家計への負担感は強まり、国内総生産のプラス成長は鈍化した

▼13日、今月に入って4個目となる台風26号がフィリピン沖で発生した。11月の4個発生は12年ぶり。秋台風の影響か、本島北部では季節外れのヒカンザクラが咲く。14日、本部町八重岳でも確認できた
▼こちらの桜にも風当たりは強まる。税金が投入される首相主催の桜を見る会だ。本来、各界を代表する人物らが会に招かれるが、安倍晋三首相の地元、山口県の支援者が多数招待されていた疑惑が浮上した
▼その視線は花より団子、桜より支援者の顔色か。便宜を図ったという野党からの追及をかわすように、安倍首相は「私の判断だ」として来年の会の中止を決めた。中止に追い込まれたというのが本音だろう
▼「さくら」には、芝居で役者に声を掛けるよう頼まれた無料の見物人の意味がある。日本語源大辞典(小学館)によると「パッと咲き、パッとにぎやかにして、パッと散る、桜の性質から出た語か」との説もある
▼桜を見る会に参加した政治家たちは当時のブログへの投稿などを次々に削除する。その様はまさに、さくら。国民の怒りは傲慢(ごうまん)な権力をやがて吹き飛ばす。風情からはほど遠い。