<金口木舌>共食い整備の行方


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 学生時代の二輪車は自分の年齢よりも古い年式でしょっちゅう故障した。古すぎて部品の在庫がなく、別の車体から使える部品を調達したものだ

▼部品を借りて整備する「カニバライゼーション=共食い整備」は、人が人の肉を食べる、共食いの「カニバリズム」から来ているのだろう。マーケティング業界でも同じ言葉がある。こちらは同じ社内で似た製品をつくってしまい、自社の顧客を食い合ってしまう現象だ
▼IT大手のヤフーと通話アプリのLINEが経営統合で基本合意した。同じIT業界にあって顧客を食い合うカニバライゼーションに陥るのではとの事前の見立てもあったが、会見で両社は互いが「補完関係にある」と強調してみせた
▼両社はペイペイとラインペイというスマホ決済など、競合するサービスを持っている。その行方については、来秋に予定する統合手続きの後に検討するという。大手2社が統合することで市場を独占してしまうのではとの指摘もある
▼ヤフーは1996年に日本で初の商用検索サイトをスタートさせた。新聞社の記事を無料で読めるサービスも拡大し、人々の日常のニュースの見方にも大きく変革をもたらした
▼今やニュースはラインで見るという人も多い。巨大ニュースサイトの統合は、人々の暮らしを、民主主義を、ジャーナリズムをどこに連れて行くのだろう。