<金口木舌>フェアウエーの花


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 少ない文字数の中に的確さを求められるのが新聞の見出しだ。目に触れる時間は短くても記憶に残るフレーズがある。「泣くな別所、選抜の花だ」は戦前の大阪毎日新聞が付けた。負傷しながら甲子園で力投した別所毅彦は後に大投手となる

▼「藍に会いたい さくらも見たい…」の見出しは2005年3月、女子ゴルフツアー、ダイキンオーキッドの開幕を報じる本紙夕刊。宮里藍、横峯さくらの両選手に加え県勢も多数出場した。例年にないギャラリー数だった
▼スタートホールで「沖縄県出身」とアナウンスされると、大きな拍手が湧き起こる。期待の新星。岡山の高校を卒業したばかりの諸見里しのぶ選手だ
▼前年優勝の藍、さくらの19歳コンビを上回って2年連続のローアマで沸かせた。同年、プロテストに合格。米ツアー挑戦、日本代表の世界戦など、活躍の領域を広げた
▼完治が難しいといわれる肋(ろく)軟骨炎の痛みで近年はラウンドできない時期もあった。「私の中でも納得した感じで終われた」と語る。一線から退くと決めた先週の試合、最終18番には仲間が詰め掛けた
▼共に日本代表だった上田桃子選手らに囲まれ涙が止まらない。14年続けたツアー参戦を締める涙。「泣くな」とは言えまい。県民に力を与える花だった。完全引退ではない。新たな挑戦を見守りたい。また、大輪を咲かせてくれるはずだ。