制止する声を振り払い、バスに次々と乗り込む車いすの人々。途方に暮れる運転手。1970年代に障がい者団体「青い芝の会」が取り組んだ川崎バス闘争の記録映像だ。2年前のシンポジウムで、ジャーナリストの安田浩一さんが上映した
▼バス会社は当時、障がい者の乗車を拒否していた。当事者の行動もあって、現在は障がいを理由に乗車を拒否する公共交通機関はなくなった。安田さんは「直接行動をきっかけに社会が変わることがある」と指摘する
▼40年余が経過し障がい者を取り巻く環境は変化した。だが障壁となる要素はさまざまな場所に残っている
▼木村英子参院議員が3日の参院国交委員会で、新幹線の車いすスペースを利用するために事前予約が必要なことをただした。赤羽一嘉国交相は「抜本的に見直すことを強く求める」と答えた
▼安倍晋三首相は「桜を見る会」の招待者名簿廃棄に時間を要した経緯を説明する中で「廃棄したのは障がい者雇用の職員だった」と参院本会議で述べた。舩後靖彦参院議員は「職員の属性は資料破棄の根本問題とは関係ない」との見解を発表している
▼浮かび上がったのは保身のために弱者を踏み台にして恥じない政治指導者の姿だ。9日まで「障害者週間」。社会のどこにバリアがあるのか。真っ先に啓発しなければならないのは日本のリーダーたちではないか。