<金口木舌>全員参加の学テに「まった」


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 小中学生ぐらいの年齢の子どもを部屋に閉じ込め、四書五経を学ばせる。嫌がると「偉い人になれ」と両親がげきを飛ばす。目標は中国の官吏登用試験制度「科挙」の通過だ。制度の実態は宮崎市定著「科挙」に詳しい

▼隋から清朝にかけて1300年余続いた。通過者は国や地方の官吏に任命され、権力と名誉を手にする。狭き門に大勢が殺到した。明朝時代には高倍率の学校入学を経て受験しても通過者は3千人に1人だったという
▼日本には「全国学力テスト」がある。小学6年と中学3年全員を対象に毎年文部科学省が実施する。都道府県別の平均正答率が発表されるため学校間の点数競争を引き起こしているとの批判がある
▼県内では、障がいのある生徒の結果の報告を管理職が止めた事例があった。過去問題を繰り返し解かせる学校もあり、教員から異議も出ている
▼学テの本来の目的は授業改善へ生かすことだ。違う方向へ進んでいる印象は否めない。高知県土佐町議会が意見書を賛成多数で可決した。学テの全員参加方式をやめ受験者を限定する「抽出式」に改めるよう国に求める内容だ
▼「都道府県の約70%、政令指定都市の約85%が独自の学力テストを行っており、子どもたちはテスト漬けの状態」と指摘した。一考に値する。点数さえ高ければいいという考えは危うい。霞が関の官僚の所業を見ればよく分かる。