<金口木舌>希望のメリークリスマス


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 「川とにらめっこしているうちに寒くなり、河川工事の季節が再び巡ってきました。みなさん、お元気でしょうか」。今月4日付のペシャワール会の会報に載った中村哲さん最後のメッセージの書き出しである

▼温暖化による国土破壊を案じながら、こう記した。「それでも依然として、『テロとの戦い』と拳を振り上げ、『経済力さえつけば』と札束が舞う世界は、砂漠以上に危険で面妖なものに映ります」
▼見せかけだけの「正義」に振り回されていないか。上辺だけの「富」に浸っていないか。アフガニスタンで川面を見つめながら、世界を見据えた中村さんの警鐘を重く受け止める
▼年の瀬を迎え、きょうはクリスマス。電飾をまとった街路樹を見ていると心も浮き立つが、本紙に載った今年の十大ニュースを読んでいると気分が沈む
▼首里城が焼けた。衝撃と悲しみは今も拭えない。県民投票があった。民意に背を向け土砂を海に投じる政府の暴挙は来年も続くのか。モノレール延長などの話題もあった。基地絡みの事件・事故の続発に胸が痛む。貴い命も奪われた
▼メッセージは「良いクリスマスとお正月をお迎えください」と結んでいる。素朴なあいさつが切なく響く。でも中村さんもそうであったように、明日への希望は手放すまい。せめてものメッセージへの返信として「メリークリスマス」とつぶやいてみる。