<金口木舌>ほど遠い共生社会

 「障がい者向けの就労支援事業所としてアパートを借りたい…」。那覇市内の事業所の理事長が依頼したところ、家主の態度が変わり断られた。障がい者の話題に触れた直後だった。取材で事業所から聞いた話だ

▼理事長は「家賃が払えない、隣近所の反応が心配―といった間違ったイメージを持っている」と推測する。事業所は公的な補助金で運営しており、家賃が滞る心配はない。知人から一軒家を借りて開所したが、後味の悪さは残った
▼共生社会がうたわれて久しいが、障がい者に対する差別は根強い。取り組みは道半ばだ。相模原市の知的障がい者施設で45人が殺傷された事件。殺人罪に問われた被告の発言に胸が悪くなる
▼「重度障がい者は不幸を生む、社会からいなくなった方がいい」。理解し難い身勝手な理屈を繰り返す。事件を正当化しようとする姿勢も変わらない。類似する事件が発生しないための方策を皆で考えなければならない
▼県立図書館で精神保健の歴史をたどる企画展を開催中だ。沖縄では戦後から日本復帰の時期まで、精神障がい者の「私宅監置」が認められていた。十分な治療が受けられず、苦しむ患者を家族がやむなく自宅の敷地内に閉じ込めていた
▼地域の偏見が患者と家族を苦しめた。つらい歴史だが忘れてはならない。差別や排除を生み、助長する要因が社会の側にある。



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