<金口木舌>「しーぶん」の心、忘れずに


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 「しーぶん(おまけ)はカチャーシー!!」。旧正月の準備の取材で訪れた糸満市公設市場の貼り紙に、頰が緩んだ。売り手と買い手の顔が見える相対売りの魅力だ

▼肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染が拡大している。感染者数や死者の増加の報道に、不安を抱く人も多いだろう。妊娠中の知人は「マスクが売り切れで手に入らない」と話していた
▼購入したら知人に渡そうと、糸満市から那覇市内までドラッグストアなど6カ所を回ったが、マスクはどこにもない。アルコール消毒液も完売だ。店員は「いつ入荷するか分からない」と言う
▼一方で、インターネットでのマスクの高額転売が問題になっている。相場の10倍以上の価格もある。サイトの運営会社は「社会通念上適切な範囲での出品・購入」を呼び掛けた
▼世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに関する間違った情報やうわさが広がっているとして適切な対策を呼び掛けるウェブサイトを立ち上げた。感染拡大は世界的大流行の「パンデミック」ではなく、誤った情報が大量に拡散する「インフォデミック」と指摘する
▼感染症の専門医らは、感染予防に「手洗い」を強調する。こまめな手洗いやせきエチケットなどを心掛けながら、顔の見えない相手にも「しーぶん」の優しさを忘れずにいたい。新型コロナウイルスの一日も早い収束を心から願う。