<金口木舌>言葉の重み


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 「テニスにさようなら」。「妖精」と呼ばれたマリア・シャラポワ選手が引退を表明した。生涯グランドスラムの達成者はたび重なるけがに苦しんだ。ドーピング違反もあった

▼波瀾(はらん)万丈の競技人生を「山あり谷ありだったが、山頂からの眺めは信じられないほどだった」と振り返り「次の人生も山を登り続ける」と誓う。挑戦を重ねる人の言葉には魂がこもっている
▼同じ言葉でも重みがない。日本の政治家だ。答弁が不安定でたびたび議事を中断させている北村誠吾地方創生担当相が「(答弁詰まりが)非常に有名になって誠にありがたい」などと発言し釈明に追われた
▼新型コロナウイルスの感染拡大防止で全国一斉の休校要請を決めた安倍晋三首相。「私の責任で対応を取る」と異例の週末会見で強調したが、質疑の時間は短く、「やってる感」をアピールするパフォーマンスに見えた
▼きょうは桃の節句。国際ペンクラブが定めた平和の日でもある。子どもの健やかな成長を祝うひな祭りの行事は平和の象徴でもある、との考えから日本ペンクラブの提案で制定された
▼「民主主義の基本である言葉の重要性が失われてきた」。沖縄の民意に向き合うよう求め日本ペンクラブが昨年の慰霊の日に出した声明だ。過去の大戦は政府が言葉をないがしろにした結果でもあったと指摘した。その懸念は深まる一方だ。