「中国発の肺炎に厳戒態勢」という見出しの小さな記事が本紙に載ったのは1月7日であった。文字数は約180字。新型コロナウイルスの最初の報道は目立たない扱いだった。それからわずか約2カ月。こんなことになろうとは
▼過去にも新型インフルエンザやSARSの経験があるとはいえ、県民生活をここまで揺さぶり、県経済を直撃する厳しい現状は予想をはるかに超える。新型コロナウイルスの猛威に言葉を失う
▼公立小中高校の休校、イベントの中止、大相撲の無観客開催や選抜高校野球の無観客検討など異例ずくめのことが起きている。政府がきょう開催するはずだった東日本大震災追悼式も取りやめとなった
▼震災で甚大な被害を被った宮城、岩手、福島の3県でウイルス感染者が増えないか気になっている。復興の妨げにもなりかねない。新聞やテレビ、ネットの報道を見ながら被災地の寒風を想像している
▼大津波に襲われ、原発事故に苦しむ地で懸命に生きる人々のことを忘れずにいたいと思う。復興を目指す不断の歩みを見つめ、逆境の中で紡がれてきた言葉に耳を傾けたい
▼岩手県の県紙「岩手日報」が震災の日に発行してきた特別号外が那覇市内でも配布される。被災地の今を伝えてくれる紙面である。東日本大震災から9年。被災地と共に歩む沖縄のちむぐくるを再確認する一日としよう。