<金口木舌>ヤマザクラのにほひ


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 本居宣長が詠んだ〈敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花〉は、作者の意図は別として後世に影響を与えた。愛国百人一首にも選ばれ、特攻隊の部隊名はこの和歌から取られた

▼これを引いた詩「山桜」で石垣島の詩人八重洋一郎さんは、陸上自衛隊と米海兵隊の共同訓練「ヤマサクラ」に結び付ける。演習で陸自隊員と海兵隊員らが島の地図を広げた床に立つ写真を見て、生まれ島が踏みつけられていると感じたと詩に表現した
▼思いは石垣島への自衛隊配備に向かう。「敵攻撃を真正面に引き受けようと誘導集中するための巨大標的」「島の人間どもには『お前たちを守るのだ』『悪いのは侵略中国』と煽(あお)りたてよう」と配備の意図を推測する
▼配備予定地にある石垣市の土地の売却議案を市議会は賛成多数で可決した。その過程で、配備の賛否を問う住民投票は実施されず、審議した市の検討委員会の議事録がないなど市民不在のまま進んでいる
▼八重さんの高祖父は島の役人で、人頭税など琉球王朝からの圧政を「琉毒」と記し、曽祖父は日本政府の所業を「日毒」と書簡に記していたと詩で紹介した。八重さんは「日毒」は今も継続していると言う
▼琉球王朝、明治政府と、常に苛政にさらされてきた八重山の島々。「中央」と「辺境」の構造も依然として残る。踏みつけられているのは地図だけだろうか。