<金口木舌>コロナ禍と介護保険


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 「感染者が出たら閉めるから予防を徹底してください」。そう運営スタッフに言われ「緊張感が高まった」と声を震わせた。デイサービスを利用している70代の親類の話だ。新型コロナウイルスの感染を心配し、友人の母親はデイサービス(通所介護)の利用をやめた

▼県は感染拡大防止のため7業態の施設に休業を要請した。福祉のデイサービスや短期入所サービスについては、厳重な感染防止策を講じることを前提に「基本は継続をお願いしたい」と説明する。家族が対応できる場合は利用者側の自粛を求めている
▼県によると感染を防ぐため既に休んでいる事業所も一部にある。今後、感染者が発生すれば休止する事業所は増えるだろう
▼家族で介護を抱え込まず社会全体で支えようと始まった介護保険制度が4月、20年を迎えた。40歳以上の保険料と税金、利用者の自己負担で運用し、介護の度合いに応じて多様な福祉サービスを選択できる
▼コロナ禍が長引けば、利用者が減少し事業所の運営が傾き制度の基盤が揺らぐ。高齢者の健康も危ぶまれる。家族の負担が増し介護離職や虐待につながらないか気掛かりだ
▼福祉と家族をつなぐケアマネジャーによるこまめな安否確認が欠かせない。制度に頼り切ってもいけない。高齢者や介護を担う人に声を掛けたい。誰かが見守っているという感覚が安心感につながる。