<金口木舌>対岸の火事ではない


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 住宅に面した斜面が道路や電柱、雑木林もろとも崩れ落ちた。止めてあった自動車が崩落した斜面にひっかかっていた。中城村で2006年、降り続く雨の影響で発生した地滑りだ。崩れた斜面のいたるところから水が噴き出した

▼樹木がきしむ音が聞こえ、斜面が崖下に向かってゆっくりと動いているように見えた。すぐそばに住む男性は「窓から外を見ると家の前の道路がなかった。崖下に落ちていた」と話した。人身被害はなかったが100世帯、360人以上が避難した。2年近く仮設住宅で過ごした世帯もあった
▼九州の豪雨で多くの河川が氾濫し、犠牲者が増え続けている。沖縄出身者も自宅が冠水するなど被害を受けた。岐阜県などでも河川が氾濫し、被害が広がっている。線状降水帯の動きなど予測の難しさが際立つ
▼政府は特定非常災害に指定し、行政手続きの特例などで被災者の負担を軽減する。同指定は昨年の台風19号などに続き3年連続だ
▼今年は避難所運営にも新型コロナ対策が求められ、困難が伴う。被害が深刻な地域では避難生活が長期化する恐れもあり、被災地支援がますます重要になる
▼沖縄は梅雨が明けたが台風シーズンが本格化する。九州から中部地方へと予測困難な被害が拡大する中、対岸の火事ではないことを思い知る。支援と備えの両面で自分のことと考える必要がある。