<金口木舌>棋聖の「悔しがる力」

 忍耐力に持久力。勉強やスポーツで求められる力だ。老人力、鈍感力は話題となった造語。「力」はさまざまあれど「悔しがる力」は初めて聞いた。最年少で棋聖となった藤井聡太七段の力である

▼師匠の杉本昌隆八段が著書の中で、弟子が成し遂げた偉業の源泉をこう表現した。幼かった頃、将棋で負けた時、将棋盤を抱えて泣きじゃくったという。現在の柔和な面持ちからは想像できない
▼「悔しい」と口に出し、じだんだを踏むのは格好悪い。しかし、悔しさをばねに前に進むことができる。「悔しがること、あきらめの悪さは一つの力」という師匠の信念は弟子に伝わった
▼藤井七段は人工知能(AI)の力も借りた。コロナウイルスの感染拡大で50日以上、対局ができなかった。その間も「自分の将棋を見つめ直すことができた」という。コンピューターソフトの指し手に闘志を燃やしたのだろう
▼17歳の棋聖誕生はワイドショーも大々的に伝えた。対局中のデザートも紹介するなど話題性たっぷり。つらいニュースが続く中で藤井七段の活躍はさわやかな風となった
▼対局後の師弟そろっての記念写真に胸が熱くなる。「師匠に一つ恩返しができたのではと思う」と語る藤井七段を杉本八段は「周囲を気にしすぎず、自分の信じた道を突き進んでほしい」と激励する。若い棋聖を導く教師力がここにある。



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス