那覇市泉崎の那覇バスターミナルから琉球新報社本社に徒歩で向かう途中、居酒屋の軒下に、長さ約6センチの透明ケースに入った赤ちゃんの写真が置かれていた。店に聞くと1カ月前からあるという
▼拾った人は写真の主に気付いてほしいと置いたのだろう。赤ちゃんは満面の笑み。大切な存在であることが伝わる。7月31日付の記事で伝えた後、本紙が保管している。一方、子の命が奪われる事件は後を絶たない
▼7月上旬には東京都大田区で3歳の娘を自宅に1週間ほど放置し、衰弱死させたとして母親が保護責任者遺棄致死疑いで逮捕された。その後も台東区では生後3カ月の女児、鹿児島市では3歳と1歳の娘が放置される事件が起きた
▼大阪市西区のマンションで3歳と1歳の姉弟が餓死したのが見つかった事件から7月30日で10年。周囲の無関心さもあり当時の関係者は悔やんだ。母親は懲役30年の刑で服役中だ
▼当時の区長、半野田孝郎さん(69)は再発防止への思いから刑務所出所者への支援活動を続ける。服役中の母親や元受刑者らの過去に厳しい家庭環境を重ねて見た。「体力が続く限りやりたい」とできることに取り組む
▼コロナ禍の中、学校の夏休みも始まった。例年と異なり休み期間は短いが、巣ごもりの時間が増えた。笑顔が消え、SOSが一層届きにくくなってはいないか。幼き声に耳を傾ける。