島から学校が消える。島の人たちや卒業生は寂しくないだろうか。島のこれからを憂いてはいないだろうか。そんなことを考えてしまう。県教育委員会が県立伊良部高校の廃校を決めた
▼2年間の宮古高校伊良部分校の期間を経て、1986年4月に開校した。島内で小中高の一貫教育が果たせることへの期待は大きかったはずだが、学校を取り巻く環境は厳しかった。過疎との闘いである
▼伊良部高校を訪ねたのは94年。当時の校長は「10年後には間違いなく定員割れしてしまう」と語っていた。島の活性化に向け、伊良部架橋を切望する声が熱を帯びていた。6年後、県教育長は高校存続へ懸念を表明した
▼小さな島で学校に寄せる思いを幾度か聞いた。30年ほど前、伊平屋村野甫島で、住民が「学校が住民生活の中心だ」と語っていたのを思い出す。うるま市浜比嘉島の住民は8年前、痛切な思いで比嘉小学校、浜中学校の廃校を迎えた
▼伊良部架橋が実現し、多くの観光客が訪れるようになった。下地島空港を生かした活性化も進んだ。その中での伊良部高校の廃校。落差を感じてしまう。島の豊かさとは何か、答えを見つけることは難しい
▼町民は高校存続を求めた。結果は残念だが、この島に伊良部高校があった歴史を忘れず、大切にしたい。その思いこそが島の豊かさを根っこのところで支えると信じるからだ。