<金口木舌>古地図のたのしみ

 古地図は時空を超えて旅ができるので眺めていて飽きない。今も残る明治時代のレンガ造りの館や江戸時代の武家屋敷の門などを見ながら地図に目を落とすと、しばしタイムトリップに誘われる

▼デジタル時代になって、昔の地図と現在の地図を重ね合わせて一つの地図で見ることができるアプリに出合った。今立つ場所がどの大名の屋敷だったのか。スマホ片手に想像が膨らむ
▼取材に向かう国会議事堂前は江戸初期は加藤清正の屋敷が立ち、その後彦根藩の上屋敷で幕末は井伊直弼が住んだ。沖縄芸能も披露される紀尾井ホールのある一帯は、紀伊徳川・尾張徳川・井伊家の屋敷が並び、三家の頭文字が地名に残る
▼さらに時代を下ると、最高裁にも近い「三宅坂」の国会前は参謀本部・陸軍省があった。国会の坂を下ると日比谷公園は練兵場。若者でにぎわう原宿や代々木公園は米軍家族の住宅地だった
▼「首里の馬」で芥川賞を受賞した高山羽根子さんは場所が語る歴史の重層性にこだわる。「それぞれの時代がその場で層になり重なっている。情報がないとあったことも分からない」と情報保存の大切さを説く
▼戦争の痕跡が見えにくくなる中、ややもすると過去の汚点をなかったことにしようとする改竄(かいざん)や修正もうごめく。15日は戦後75年の敗戦の日。それぞれの立つ場所で、歴史の重層性を意識し続けたい。



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