<金口木舌>ストーカーと不平等


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 埼玉県桶川市の路上で1999年、21歳の女性が刺殺された。殺害を指示したのは女性から別れ話を切り出され、嫌がらせを続けていた男だった。事件をきっかけに翌年、ストーカー規制法が制定された

▼最高裁は7月、衛星利用測位システム(GPS)の機器で相手の位置情報を知ることを、ストーカー規制法で禁じる「見張り」に当たらないと判断した。GPSを使ったストーカー事件が相次いでいるが、同法には明確な規定がない
▼専門家は速やかな法改正を求めている。ストーカー規制法は制定から20年が経過した。被害が多様化する中、2012年に神奈川県逗子市で、13年には東京都三鷹市で女性が殺害されている。法律が時代の変化に追いついていないとの指摘がある
▼警察庁の統計でストーカー被害の相談件数は昨年、全国で約2万1千件に上る。摘発件数は2300件を超え、禁止命令なども毎年増え続けている。被害者の9割近くを女性が占め、20代など若年層に集中する
▼なぜ女性への加害が大半を占めるのか。女性による拒絶を受け入れない男性が多いとすれば、背景に「女は男の所有物」という誤った考えがないだろうか
▼昨年、性犯罪に関する法改正を求めるフラワーデモが全国に広がった。ストーカー規制の法改正はもちろん、男女の不平等を放置しないという視点も忘れてはならない。