<金口木舌>子どもたちが「恩師」思い出すために


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「人間は善か悪か。思うところを書きなさい」。高校時代、倫理の授業で出された課題に眠気が覚めた。テスト前に教科書を暗記すればいいと踏んでいたが、その授業は毎回真剣に考えなければ答案に何も書けない

▼ソクラテスの「問答法」、中国の公孫竜らの「白馬非馬説」などを教師が実演したため、暗記の必要もなく自然に理解できた。宗教の歴史や哲学に興味を持つきっかけを与えてくれた
▼1966年10月5日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「教員の地位に関する勧告」を採択した。「指導原則」の項目では、教員に「受け持つ生徒の教育と福祉に責任感」を持つことを要求している
▼「厳しい不断の研究によって得られ、かつ維持される専門的な知識および技能」。責任の前提となる教員が持つべき能力も明記されているが、沖縄はどうか
▼昨年の全国学力テストは県内小学生は7位、中学生も最下位ではあるが全国との差が縮まるなど、教育現場の努力は結実している。ただテスト対策に追われる現場に過剰な負担がかかり、教材研究や授業の創意工夫に十分な時間が保てているか気がかりだ
▼米国の思想家ヘンリー・アダムスは「教師が及ぼす感化は永劫である」という言葉を残した。今日は世界教師デー。子どもたちが大人になっても恩師を思い出すことができるよう、教育の在り方を改めて問うてもいい。