80年前の今日、大政翼賛会が一国一党を目的に発足した。「バスに乗り遅れるな」を合言葉に全国に支部組織を拡大。沖縄でも知事が支部長を務めるなど国家体制ができあがった
▼学問や報道の自由は脅かされ、「一億総玉砕」が掲げられた時代。大本営発表は客観的な事実を伝えず、沖縄の地上戦や広島と長崎への原爆投下などで民間人も巻き込まれ、約310万人の日本人の命が失われた
▼日本学術会議の会員の首相任命を巡り、菅義偉首相が会員に推薦された6人の任命を拒否した。「総合的俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点から判断した」というが、経緯や理由は伏せたままで、全く説明になっていない
▼大戦中に軍事研究に携わった物理学者の湯川秀樹氏は戦後、その反省から戦争放棄を訴え、平和の尊さを強調した。科学者らが集う「日本パグウォッシュ会議」は湯川氏らが中心となって1957年に設立された
▼「『独立性』の原則が侵されれば、時の政権におもねることなく、あくまで科学の観点から客観的・冷静な助言を行う学術会議の責務を果たすこと自体が難しくなる」。菅氏の任命拒否に対し、日本パグウォッシュ会議は危機感をあらわにする
▼形式的な任命にとどまるとしてきた政府見解を覆し、学術会議会員の任命権に振りかざす菅氏の狙いは何か。戦前に戻るバスなら国民は乗車を拒否する権利がある。