<金口木舌>ピントを合わせる


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 スマホで何でも撮れる今からすると、ピントを合わせるといってもピンとこないかもしれない。入社当時は一眼レフカメラで、常に被写体との距離を目測してピントを合わせておくのだと先輩に習った

▼最初に触れた祖父のカメラはうまく扱えずピンボケでうまく撮れなかった。それが親戚のおじさんが仕入れてきたオートフォーカス(自動焦点)機能付きのカメラだと、きれいにピントが合ったので驚いた
▼そのカメラはミノルタα7000という。それまでの流れを変えて一眼レフの本格的自動焦点を実現させたこのカメラの登場は、現在のデジタル一眼レフシステムにもつながっていく。その重要性が認められ本年度の「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」に選定された
▼カメラで写真を撮る時は、ファインダーをのぞいていない目も開けて撮っている。カメラで切り取っている光景には映っていない、外にあるものも同時に見ておきたいから
▼スポーツの取材現場では特に、ファインダーをのぞき込んだままだと周囲の状況が分からずシャッターチャンスを逃してしまいかねない
▼取材の現場はカメラだけでなく、記者会見の質問の仕方や内容でも「ピント」が大事だ。どんな質問をするのか、読者は見ている。ピントの外れた質問をしていないか、その姿勢から権力側との距離もおのずからさらけ出される。