「引きこもり対策室がある市役所は少なく、当事者は取り付く島がない。全国に受け皿をつくらなければ、命に関わる」。障がい者の就労をテーマに北谷町で開かれたシンポジウムで岡山県総社市の片岡聡一市長が指摘した
▼総社市は窓口を設け、当事者や家族の相談を受けている。片岡市長は「当事者は働く以前に生きていくことに悩んでいる。悪いのは彼らが引きこもらざるを得ない社会をつくった政治だ」と強調した
▼引きこもりは不登校や「就職氷河期世代」が安定した職業に就けなかったことがきっかけになることも多い。長期化と高年齢化が進み、親が80代、本人が50代で生活に困窮する「8050問題」の対策も急務だ
▼県内で行政や専門家が連携し、当事者や家族が集まる「地域家族会」の設立を支援する事業が始まった。複数の家族会が活動しているが孤立した家族も多いとみられる。那覇市で開かれた会合で当事者は「信頼できる友人に根気よく支援してもらって今がある」とつながりの大切さを語った
▼内閣府によると、当事者は40~64歳で61万人、15~39歳で54万人と推計する。新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で支援を届けづらくなっているという
▼困難を抱える人は身近にいる。行政の支援に加え、私たちが支え合うことで誰もが生きづらさを感じない社会をつくることができるはずだ。