<金口木舌>首里城正殿は「漆の工芸品」


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 彩色復元された第二尚氏第十四代国王、尚穆王(しょうぼくおう)の「御後絵(おごえ)」が県立芸大で開催中の鎌倉芳太郎と首里城をテーマにした展示会で初公開されている。中央に鎮座した国王を家臣が取り囲む構図、極彩色の絵は圧倒的な存在感を放つ

▼今年完成したため、首里城火災による焼失を免れた。御後絵は歴代国王が亡くなった際に描かれ、第二尚家の菩提(ぼだい)寺・円覚寺に保管されていた。沖縄戦で焼失した
▼御後絵は琉球王国時代の絵師の高い技術を伝える美術工芸品のひとつ。戦前に鎌倉が撮影した御後絵のモノクロ写真が見つかり、戦後に復元が始まった。歴代国王の御後絵のうち彩色復元されたのは3件
▼1992年に復元された首里城には御後絵など美術工芸品や尚家資料など1510点が収蔵されていた。管理・運営する「沖縄美ら島財団」が長年、収集してきた
▼黒漆に螺鈿を施した東道盆(とぅんだーぶん)、精緻な図案の紅型。美術工芸品は絵師らが所属する王府内の奉行所を中心に制作され、交易によって独自の様式が生み出された。首里城正殿を「漆の工芸品」と称する人もいる。城全体に工芸技術の粋が集められている
▼昨年の火災で391点が焼失し、少なくとも194点は修繕が必要だ。修復・復元は再建の課題のひとつ。修復・復元過程を通して伝統工芸の担い手を育成できたらと願う。文化力のすごみは沖縄の自信につながる。