<金口木舌>写真家7人が見つめたものとは・・・


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 東京都写真美術館で開催中の展示会「琉球弧の写真」に足を運んだ。沖縄を代表する写真家である山田實、比嘉康雄、平良孝七、伊志嶺隆、平敷兼七、比嘉豊光、石川真生の作品を紹介している

▼写し出されているのは1960~70年代の沖縄。沖縄戦の爪痕が残る時代を生きる人々の暮らしや、大きなうねりとなった復帰運動、各地に伝わる祭祀(さいし)を捉えた206点は時代の証言である
▼作品には子どもを捉えたものもあった。屈託のない笑顔で夢中で遊ぶ姿、生き生きした表情は見るものに元気を与える。撮影したのは2017年に亡くなった山田さんだ
▼廃虚の中から復興を遂げる沖縄で、いち早く子どもたちにレンズを向けた。原点にあったのはシベリアでの過酷な抑留体験である。敗戦後、大人たちが絶望の縁にいる中、山田さんは子どもたちの元気な姿に復興への希望を託した
▼米施政下で米軍による事件や事故が続発し、県民の人権が著しく制限された。71年の毒ガス移送を撮ったのは比嘉豊光さん。ゲート前で銃を構える武装した米兵と住民がにらみ合う場面は、名護市辺野古の新基地建設現場で起きている現在の光景と重なって見える
▼7人の写真家は不条理な沖縄の現実を見つめてきた。写真は日本、米国という大国のはざまで歴史を刻んできた沖縄の現実を突き付ける。もう翻弄(ほんろう)されたくないと強く思う。