<金口木舌>児童手当は将来への投資


社会
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 菅義偉首相が就任した9月、日本とフィンランドの政治風景を象徴する比較写真がツイッターで話題になった。日本側は菅自民党総裁(首相)と、男性の党幹部が並び平均年齢は71歳を超える。フィンランド側は30代女性首相と女性閣僚が写っている

▼2枚を比べ、女性の政治参画の遅れを嘆くツイートが広がった。菅内閣の閣僚21人のうち女性はわずか2人。フィンランドの内閣は19人中、女性が11人
▼日本に多様性があれば実情に応じた政策が出てくるのではないか。そう思う出来事があった。高額所得世帯の児童手当の縮小だ。そのからくりは、子育て世帯の年収の判定基準を「世帯主」から「夫妻の合計」への変更だ
▼無理やり所得制限の対象世帯を広げて、ねん出したお金を待機児童対策に充てる。対象世帯が子ども2人なら年間12~36万円引き下げとなる可能性もある。子育て予算の拡充ではなく、内部で帳尻を合わそうとしている
▼日本の教育費の公的負担の割合は、OECD加盟国の中で最下位クラス。菅政権は共働きによって教育費を賄っていること(自助)を理解していない。手当(公助)を減らし、自助に頼る。これが菅首相の「自助・共助・公助」の実態だ
▼子育て世帯への公的支援が先細りすれば少子化に歯止めはかからない。安定した社会保障制度をつくるために、予算全体の配分を見直す必要がある。