<金口木舌>県の方向は


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 正面か、横向きか。首里城再建に伴い正殿に設置されていた大龍柱の向きが議論されている。今後は国の技術検討委員会でも議題に。向きを決める上で文献などの資料が重要な判断材料となるのは言うまでもない

▼同じく注目されるのが首里城地下にある日本軍第32軍司令部壕。沖縄戦を伝える「負の遺産」として保存公開を求める声が高まっている。その方向性を決めるため県は32軍壕に関する資料収集に取り組むと発表した
▼75年前の沖縄戦では、戦況の悪化で撤退する日本兵らが軍事資料を壕内などで燃やしたという証言は多い。戦火によって軍事以外の公文書や首里城などの文化財までもが焼失させられた
▼野党が資料を要求した日に、政府が廃棄したのは桜を見る会の出席者名簿。電子データも処分し「行政文書ではない」と開き直った。幕引きかと思いきや、東京地検の捜査で事態は動くか
▼権力による決定過程を検証し、教訓とするためにも公文書の保存は不可欠。記載情報は主権者たる国民、県民のもの。発言者や日時が特定できるなど、記載のあり方には適正さも求められる
▼県は新型コロナウイルス感染症対策本部会議などの議事録を作成していない。開業医らが26日、作成するよう要請した。資料がないことによる不利益は十分身に染みているはずだが、果たして県はどちらに向いているのだろう。