7年前の12月27日、年末の慌ただしさが一層増した。名護市辺野古の新基地建設計画で、当時の仲井真弘多知事が埋め立ての承認を表明した。取材に追われ、正月どころではなかった
▼この時期に合わせて思い出すのが、承認2日前の安倍晋三首相と菅義偉官房長官。首相官邸で仲井真氏と面談し、報道陣の前で額を机に近づけるほど深々と頭を下げた姿が印象的だった。シナリオ通りの演出のように見えた
▼こちらの結末はどうなるのやら。安倍氏の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、東京地検は今月24日、政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴とした
▼安倍氏は会見や衆参両院で、これまでの国会答弁が事実と異なっていたことを認めた。「行政府の長、自民党総裁、国会議員として国民、与野党全ての国会議員に深くおわびする」とここでも頭を下げた
▼菅首相も事実と異なる答弁を記者団に陳謝したが、桜を見る会の再調査をしないと言う。幕引きを図りたい政権の思惑もにじむ。告発した弁護士らは検察審査会に申し立てる予定だ
▼国会は国権の最高機関であり、国民の代表が一堂に集まる。「政治と金」を巡り、いわば安倍氏は国民に向かって、事実と異なる答弁を少なくとも118回繰り返した。頭を下げて済ませる。その演出はもう通じない。