<金口木舌>フットボールとビスケット


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 「フットボール」と「ビスケット」と聞いて、何を連想するだろう。スポーツ観戦と、そのお供というわけではない

▼米大統領に帯同する「革のかばん」の呼び名がフットボール。核攻撃に必要な機器や選択肢を記した手帳などを中に収める。発射に必要な暗号コードを記入したカードの通称がビスケット
▼米軍最高司令官である大統領はビスケットを身に付け、同行の米兵がフットボールを持つ。フットボールは核のボタンとも呼ばれる。2016年、オバマ大統領が広島を訪問した時も持ち込まれていた
▼核兵器禁止条約が22日、発効した。核兵器を非人道とし、全面禁止と廃絶を掲げる。署名したのは全て非保有国。米など保有国や唯一の被爆国である日本は批准していない。条約前文には、全被爆者の受け入れがたい苦しみに留意すると明記する
▼広島、長崎での締約国会議について、菅義偉首相は「締結国でない中で不適切だ」と国会答弁した。一方、核保有国と非保有国の「橋渡し役」を務める考えも強調した。矛盾を通り越し、国際社会から信頼を損なわないかと不安もよぎる
▼エゴと欺瞞(ぎまん)に満ちたトランプ前大統領が刻んだのは悪名。バイデン大統領は就任式で分断の克服や国際社会における米国の責任、歴史の評価に言及した。核なき世界は平和への命題。日米の新政権は当事者、傍観者のどちらに立つのだろう。