<金口木舌>ノートルダム寺院と首里城


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 首里城が焼失した際、正殿前に立つ2本の大龍柱は火災に耐えて焼け残った。周囲は全て焼け落ちたにもかかわらず、龍柱は高熱にさらされて劣化していたものの、その姿をとどめていた

▼首里城火災の約半年前、ノートルダム寺院も炎に包まれた。翌日、高さ96メートルの尖塔(せんとう)の先端に取り付けられていた銅製の風見鶏が見つかった。パリの人たちを見守る「お守り」とされていた像の発見に、地元では「奇跡だ」と、再建への希望を見いだした
▼西洋では風向計の役割だけでなく魔よけの意味もあるそう。象徴的な建物の焼失という悲劇の中、シンボル的なオブジェが双方とも原形をとどめたのは偶然だろうか
▼風見鶏は、比喩的に周囲の状況をうかがい態度を変えるポリシーのない人、という意味で使われる。しかし本来は風に立ち向かい、流されない強さを意味するという
▼意味合いの変化は、中曽根康弘元首相が「風向き次第で態度がすぐ変わる風見鶏」と言われたことがきっかけとされる。現首相の菅義偉氏は、日本学術会議などの対応を見ていると、持論を曲げず異論を排するタイプか
▼新型コロナの対応で、求心力が低下している菅首相。日和見的な風見鶏の態度は困るが、持論に固執するのも問題だ。反発を受け、コロナの入院拒否者の懲役刑の見直しを検討する。向かい風に立ち向かう強靱(きょうじん)さと柔軟さが求められる。