<金口木舌>今の音を残す


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 ジャズピアニストのチック・コリアさんが死去した。「スペイン」「ラ・フィエスタ」など数々の名曲を世に送り出した。若手の発掘でも功績があった

▼知名度は劣るが米ジャズの作編曲家、サミー・ネスティコさんも1月に亡くなった。カウント・ベイシー楽団の専属も務め、楽曲は日本のアマビッグバンド、特に学生のお手本となった。演奏したことのないアマバンドを探すのが難しいのではないか
▼若手育成に尽力と言うと亡くなったジャズピアニストの香村英史さんもそうだった。那覇で営むライブハウスで何度か演奏を聴いた。若い演奏家とのセッションで、厳しくも温かく導くような旋律が印象に残る
▼音楽業界も演奏会の中止が相次ぐ。どうにか演奏を届けようと懸命な取り組みも。50年の歴史がある山野ビッグバンドジャズコンテストが13、14の両日、オンライン開催された
▼例年は予選を勝ち抜いた全国の学生バンドが一堂に会し競う。順位をつけないコンサート形式とし、事前収録分を公開した。メンバーの演奏をリモートでとり1曲に仕立てたバンドもあった
▼琉球大も出場しネスティコさんの代表曲を披露した。ネット環境や録音技術を駆使し、自分たちの今の音を残したいとの学生たちの心意気が感じられた。偉大な先達が大切にしてきた若き才能は受難の時代にも着実に育ち、観衆の心を震わせている。