<金口木舌>街の変化とマネキン


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 ジャーナリストの語源「ジャーナル」には日記という意味がある。記者として継続的な観察も時に必要だ。そのせいか、街を見詰め続ける目に出会うとはっとする

▼名護十字路近くの商店街の変化を60年近く見続けているのは創業70年の「山端呉服店」のマネキン。あごの部分がはがれた姿がどうしても気になり、店内に入った
▼ガラス棚に展示されている反物、七五三の色鮮やかな着物が目を引く一方、色あせた婦人服も。在庫の中には15年ほど売れ残っている商品もあるが、店主の山端初子さんは「店を守りたい」と電話の近くのいすに腰掛ける
▼本島北部の商業の中心地として栄えた名護市城は、1990年代以降の大型店舗の進出に伴い人出が減った。県の2018年の調査によると、名護市の空き店舗率は14・5%。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、地元の商店街から買い物客は遠のくばかり
▼地域の小売業が大型店に太刀打ちすることは難しい。その大型店も今や米アマゾン・コムに代表されるインターネット通販の拡大などに脅かされている。市場は常に変革し続ける
▼私たち消費者が低価格ばかりを追求した結果、地元の商店街の衰退を招くとしたら本末転倒だ。オンラインで買い物するより割高で、不便かもしれない。それでも、街の変化を観察し続けるように存在する老舗には魅力がある。