<金口木舌>積み上げた99勝


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 のびのびという言葉がぴったりの戦いぶりだった。選抜高校野球で具志川商が初勝利を挙げた。ヒットエンドランに盗塁と持ち味の機動力を生かし、ミスはあっても伝令を交えた笑顔で切り替えた

▼ことしは沖縄の高校野球にとって記念すべき年である。1971年、普天間が選抜大会で県勢初勝利を挙げてからちょうど半世紀だ。60年の那覇の県勢初出場から11年、7校目の挑戦で初めてつかんだ1勝だった
▼その勝利も青森県勢からである。弘前との対戦は玉城善則投手と相手先発の投げ合い。2―2の九回裏、1死満塁の絶好機に米須清徳選手が三遊間を抜く適時打で劇的なサヨナラ勝ちを収めた
▼当時、「春に弱い」と言われた沖縄の高校野球は選抜につながる秋の九州大会でもなかなか勝てなかった。慣れない船旅に鉄路の移動もあったのだろう。秋の九州での県勢初勝利は74年、赤嶺賢勇投手のいた豊見城。選抜では8強入りした
▼その後、着実に選抜出場を重ねた。春の勝利数は九州では福岡、熊本に次ぐ3位となった。その時々の球児、指導者らの努力でつかんだ大舞台での一戦一戦が県民を活気づけてきた
▼選抜初勝利から50年の節目の具志川商の1勝は、夏を含めた甲子園での県勢の99勝目でもある。大台達成の期待も高まるが、ナインには次戦も気負わず、具商らしいプレーを見せてもらいたい。