<金口木舌>エイプリルフール


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 「宿題ぜ~んぶやってくれるパソコン発売」「航空機1機プレゼント」「ジュラ紀恐竜の足跡にトミカ跡」…。昨年のエープリルフールに各企業がリリースした“うそ”のネタである。どれも、くすっと笑えて元気が出る

▼一方、昨年は新型コロナウイルス感染拡大を受け自粛する企業も相次いだ。感染拡大の中、うそをつくことへの是非が議論を呼んだ
▼コロナ禍でさまざまなデマやフェイクニュースが巡った。「ウイルスは熱に弱く、お湯を飲むと予防に効果がある」「納豆が予防になる」など。トイレットペーパーが品薄との情報を真に受け買い占めする人も続出した
▼フェイクニュースという言葉はなかったが、70年以上前も意図的に作り出されたうそのニュースが席巻していた。戦時下の「大本営発表」である
▼記者を集め戦況を発表する場だが、国民の戦意高揚のために改ざん、ねつ造された。発表を報道機関は垂れ流した。76年前のきょう、米軍が沖縄本島に上陸した。国民の知る権利が奪われ、多くの悲劇につながったことを沖縄戦を通して県民は知っている
▼膨大な情報があふれる中、一つの情報のみをうのみにせず複数の情報に接して正しいかどうか見極めることが重要だ。きょうはエープリルフール。不安や憎悪をあおって社会を分断し、ひいては生命を脅かすようなうそには翻弄(ほんろう)されたくはない。