<金口木舌>南部の地に眠る遺骨と不穏な風


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 糸満市米須に終戦後「真和志ハイスクール」という学校があった。糸満高校の分校で、校長は翁長雄志前県知事の父・助静(じょせい)氏。米軍の指示で米須に集められた真和志村民が遺骨を集め、「魂魄(こんぱく)の塔」を建てた

▼村民の戦後はここから始まった。金城和信(わしん)真和志村長が呼び掛けた遺骨収集には、ハイスクールの生徒も加わった。塔の近くでは今も遺骨が見つかる。この地は沖縄戦の犠牲者の血が染み込み、遺骨が埋もる地である
▼犠牲者の眠りを乱すつもりなのか。糸満や八重瀬の採掘場から、名護市辺野古への埋め立てに使う土砂の搬出が問題になっている。骨が混ざった土砂が新基地建設に使われようとしている
▼各市町村議会では、南部の土砂を埋め立てに使わないよう意見書の決議が相次ぐ。しかし糸満市と豊見城市の市議会では否決された。いずれも激戦地だったのに
▼「遺骨が眠る土を新基地建設に使うのは人道的に許せない」。トマト農家の金城博俊さん(43)=豊見城市=は3日から豊見城市役所前で座り込みをしている。市議会に再度採決を要望、可決を求める署名も募る
▼「和魂(にぎたま)と なりてしづもる おくつきの み床の上を 渡る潮風」。助静氏の歌で、魂魄の塔にある。犠牲者が穏やかに眠る地に吹く、優しい潮風を詠んでいる。今、この地に不穏な風が吹いている。金城さんの座り込みは、8日まで続く。