<金口木舌>感染者ゼロのパラオ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 西太平洋にあるパラオ共和国は戦前、日本の委任統治下にあり、約1万1千人余の日本人が住んでいた。約4割が沖縄県人。1944年、パラオ諸島ペリリュー島の日米両軍の戦闘で、多くの県系人も犠牲になった
▼沖縄との縁も深いこの島々では、新型コロナ感染者ゼロを保ち、封じ込めに成功している。早い段階から海外との往来を制限し、水際対策を徹底した。全住民対象のワクチン接種も1月に始まった
▼感染予防対策が成功している台湾とパラオ間で1日、ツアーが解禁された。「経済か感染防止か」をてんびんに掛けてきた日本をよそに、先手先手の取り組みでマスクなしの生活が始まっている
▼県内でも高齢者対象のワクチン接種が始まった。一部市町村は予約に申し込みが殺到し、受け付けを停止。予約できなかった人からは不満の声も上がる。県内の医療従事者でさえ、2回接種を終えた人は約2割。ワクチンが足りないのだ
▼政府のワクチン確保の見通しが甘い。一事が万事、後手に回った。「アベノマスク」に見られる場当たり的なコロナ対応や、空港などでの水際対策の不十分さが今の事態を招いた
▼四半世紀にわたり、日本の統治下にあったパラオには、日本語由来の言葉が多くあるという。「ダイジョーブ」はその一つ。マスクなしでも「大丈夫」。そう言える日は、いつ来るのだろう。