今年のフジロックフェスティバルの配信映像を見て気付いたことがあった。ライブ演奏の終了後、会場に響くのは拍手のみ。観客の歓声はなく静かだった
▼大規模な音楽イベントの開催には批判的な意見があった。一方、窮状にある音楽業界を救うために実施すべきとの声もあった。出演を辞退したアーティストもいれば、コロナ禍に希望を与えたいとステージに立った出演者もいた
▼主催者は「コロナ禍で開催する特別なフジロック」を掲げた。入場者を制限して酒類を販売せず、大声を禁止した。出演者は演奏の合間に感染対策を呼びかけた。観客はそれに応え、大きなトラブルは起きなかった
▼愛知県の音楽イベントでは酒類販売や観客の密集などが問題視され、地元自治体が抗議した。出演者の一人は感染予防のため会場で注意を促したことを明かした。結果的に思いは伝わらず、多くの人に迷惑を掛けたとして謝罪した
▼音楽イベントでは感染を防ぐためにさまざまなメッセージを発信した。観客がその言葉を受け止め行動を変えれば、感染リスクや地域に与える不安を軽減できた
▼新規感染者数が高止まりする県内では、外出や渡航の自粛など多くのメッセージが出ている。厳しい状況にある医療現場からは悲鳴が上がる。一つ一つの言葉に耳を傾け日々の行動を考えれば、コロナ収束後の日常に近づくはずだ。