<金口木舌>消えない苦しみ


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 性被害者当事者団体「Spring」初代代表理事の山本潤さんは13歳から7年間、父親から性暴力を受けた。父母の仲たがいを恐れ、母親にも被害を打ち明けられず一人で抱え込んだ

▼父親が別居した後も、山本さんはアルコール依存症、脅迫症状などさまざまな後遺症に苦しんだ。著書「13歳『私』をなくした私 性暴力と生きることのリアル」につづっている
▼県の性暴力被害者ワンストップ支援センターがまとめた相談件数は10代が最多。29歳以下が5割を占め若い世代の性暴力被害が深刻だ。相談全般の加害者との関係は、知っている人が8割近くを占めた。山本さんの被害に重なる
▼刑法の性犯罪規定の改正に向けて議論が進む。焦点の一つが現行で13歳の性交同意年齢の引き上げだ。日本は先進国の中でも低い。支援団体は子どもの人権保護の観点から著しく遅れていると批判する
▼先進国の性交同意年齢の主流は15~16歳だ。諸外国では同意のない性行為を処罰の対象とする考えから年齢を引き上げる流れがある。しかし、日本は反対論も根強い。背景に性犯罪への無理解や被害を軽んじる風潮があるとされる
▼刑法改正は被害防止の手だてになろう。「性暴力を許さない」を合言葉に、全国で開かれているフラワーデモに賛同の輪が広がっている。被害者を支える。その思いの共有が法改正への原動力になる。