想像力が欠如すると安易に「イマジン」を使いたくなるのだろうか。北京五輪の開会式を見ながらそんな皮肉を感じた
▼ジョン・レノンさんが歌った名曲は、宗教や国家、所有もない平和な世界の想像を呼び掛ける。発表から半世紀がたったが、そのメッセージ性からさまざまな場面で歌い続けられている
▼半年前の東京が記憶に新しいが、平和の祭典の五輪でもたびたび歌われてきた。トリノ五輪の開会式ではレノンさんの妻のオノ・ヨーコさんが一節を用いて平和を訴えた
▼ただ、中国は新疆ウイグル自治区の人権侵害や香港での言論弾圧が国際的な批判を受けている。スポーツと政治は別に考える必要があるとはいえ、きらびやかな舞台の裏の見過ごせない現実を思うと、開会式の素晴らしいメッセージも額面通りに受け取れない
▼イマジンは「想像してごらん、国など存在しないと」と、世界が一つになる理想を歌う。国威発揚や国家による弾圧とは無縁の、純粋にスポーツを楽しむ大会であってほしい。そんな想像を夢想で終わらせたくない。