<金口木舌>取材中に泥塗られ…


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 カメラを構えていると、顔に泥を塗られた。宮古支局で勤務していた頃、宮古島市平良島尻の伝統行事「パーントゥ」を取材し、記者も泥を塗られた

▼仮面をかぶる異形の神「パーントゥ」3体は集落のあらゆる人や場所に泥を塗って悪霊を退散させ、厄を払う。しかし、コロナ禍は伝統行事にも影響し、パーントゥは昨年、2年連続の中止となった。本来なら厄払いの本領発揮といきたいはずだが、悩ましい状況だ
▼一方、宮古の伝統行事で明るいニュースも報じられた。池間島で神事をつかさどるツカサンマが6年ぶりに誕生したのだ
▼任期中、守るべき決まりごとや制約が多く、不在が続いたツカサンマ。危機感を持つ自治会が「島の祭祀(さいし)を守りたい」と時代の変化を考慮して基準を緩和し、後継者誕生につながった
▼厄払い、祈りなどは地域の絆を強め、心のよりどころにもなってきた。時代とともに生活様式が変化する中、島々で大事に培われてきた伝統や精神文化を次代へどう継ぐのか。身近な地域に目を向け、改めて考えたい。