<金口木舌>加害の歴史を語り継ぐ


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 映像を見た時、全身に衝撃が走った。元日本兵らが戦時中の住民への加害行為を告白し、悔いていた

▼制作した神直子さん(44)=愛知県=は2000年に大学生のころ訪れたフィリピンで、日本軍の住民虐殺を知った。夫を殺された女性に責められ、言葉を失ったという
▼沖縄戦に先立ち1945年2月3日から、1カ月の日米の戦闘で10万人の市民が巻き添えで亡くなった。マニラ市街戦である。米軍の上陸前、ルソン島南部では「ゲリラ討伐」を名目に住民らが数十人、数百人単位で井戸に投げ込まれ、爆殺された
▼神さんは、その地域に駐屯した日本軍の部隊名簿から400通近い手紙を送り、元日本兵らの取材につなげた。強盗や強姦、殺人、放火などをしたこと、心の奥底で抱えてきた罪の意識など100人以上から証言を集め、現地でも上映した
▼戦後世代とNPO法人「ブリッジ・フォー・ピース」を設立し、草の根の活動を続ける。本当の平和とは、過去と向き合うことから始まる―。その提起は、緊張の高まる今の時代に重く響く。