<金口木舌>川を思う人々


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 米軍キャンプ瑞慶覧に掲げられた大きな日米両国旗を背後に、北中城村石平の細道を下ると桜並木が見えてくる。普天間川沿いで地域の人々の目を楽しませる約320本のヒカンザクラだ

▼石平には米軍による土地接収で古里を失った人々も暮らす。人々は普天間川で水をくみ、子どもたちが川で遊んだ。だが大雨による氾濫を防ぐため川岸がコンクリートで整備されると、雑草が茂って不法投棄も相次いだ
▼有志が「石平家人衆(やーにんじゅう)会」を作り、桜を植えたのが2005年。毎年花が咲く名所になった。「川に親しむ風景を取り戻そう」との思いが実を結んだ。桜の植樹は別の川沿いなど県内各地に広がる
▼県企業局によると、県内の日平均取水量の大半はダムだが、河川からも13%を賄う。一方で多くの川が米軍基地内を流れる。有機フッ素化合物による汚染も近年明らかになった
▼多くの川岸がコンクリートになり、水と触れ合う風景は減った。しかし今も川は暮らしと密接に結びつき、川を思う人々の活動も脈々と続いている。